NO.3夏季号 2000年6月1日発行

農POと作物づくり-農POの特徴と作物の生育の関係-全農営農総合対策部 生産資材研究室
技術主管 林 英明

1.べたつかない性質と作物の生育[隙間を作らない展張がポイント]
「農POのハウスはキュウリには向かない」という話があります。乾燥するのでキュウリの育ちがよくないということです。しかし、調べてみるとキュウリが立派にできているハウスも多く、過度に乾燥するというのは農POハウスの共通した特徴ではないようです。こういうと安心して乾燥のことを忘れてしまう方がいるかもしれませんが、ちょっと待ってください。実は、農POハウスが乾燥する可能性はあるのです。

それは農POがさらさらして、べたつかないという性質があるからです。べたつく農ビに比較して、農POは合わせ目に隙間ができやすく、ハウスの密閉度が低くなりやすいからです。

乾燥する農POハウスというのは、隙間が多く、そこからハウス内の湿った空気と外の乾燥した空気が出入りして、結果的にハウス内が乾燥すると考えられています。農POのハウスは、フィルムの重ね部分で余裕を充分にとり、農PO用のビニペットや巻き上げ式換気装置を使えば密閉性を向上させることができます。

2.農POの光学的特性と作物の生育[散乱光の積極的な利用]
農POの基本的な光学的特性の一つとして透過する光線の中で散乱光の占める割合の多いことが挙げられます。このことは、作物の光合成や強日射下での葉焼け防止に有利なことを創刊号で述べましたが、クリンテート梨地などの農POは散乱光の割合をさらに高めたフィルムです。

日射しの強い時期に、温度を下げるために寒冷沙などで作物を被覆することが行われていますが、この方法では光線が被覆資材に吸収または反射されるので、作物の生育に必要な光が不足しがちです。その点、梨地の農POは光をよく透すので光線不足になる心配はありません。透明の農POを外張りにしたハウスで内張に梨地の農POを使用すると、より強い目射の下でも高温障害を防止することができます。

[散乱光の積極的な利用]
ご承知のように、紫外線は花や果実の色づきを良くし、ミツバチが正常に飛行するために必要な光線ですが、紫外線を透さないフィルムでハウス内に入る紫外線を少なくすると葉菜類の生育が早くなったり、病害虫の発生が少なくなります。そのため、ハウス用のフィルムについては紫外線透過率の違うフィルムが市販されており、栽培する作物によって使い分けられています。

JA松本ハイランドのカーネーション農家DXハウスJA松本ハイランドのカーネーション農家DXハウス 農ポリと農サクビはポリオレフィン系のフィルムですが、これらは農ビに比較して保温性が劣っていたため、ハウスの外張り用に使用されることは少なかったわけですが、保温性の向上を大きな改良目標として開発されたポリオレフィン系のフィルムが農POです。 農POは、基本的に、農ビより紫外線をよく透します。したがって、普通の透明の農POは、ミツバチで授粉するイチゴやメロン、果実が濃い紫に着色しなければならないナスなどに使用できます。 農POもあります。三善加工のグローマスターは近紫外線をカットした農POです。軟弱野菜の栽培に使うと生育が速まり、病害虫の発生が少なくなります。

がんばる!クリンテート家族
小型育苗システム導入し、高設装置の増設で省力化、安定生産福岡県 JAふくおか嘉穂いちご部会
JAふくおか嘉穂は、福岡県のほぼ中央部に位置し、周囲(東・西・南)を山に囲まれ、南部山地からの嘉麻川と、西部から流れる穂波川が飯塚市内で合流し、遠賀川となり北へ向かっている。耕地の大部分はこの両川に沿って広がる沖積層で比較的肥沃な土壌で覆われている。
年間平均降水量は、1,796mmで夏期高温・冬期低温に加えて曇天日数が多く、必ずしも恵まれた農業環境とはいえない。

傾斜をつけた架台によるいちご高設装置傾斜をつけた架台によるいちご高設装置当いちご部会は、作業の省力化を目的に小型育苗システムを導入し、健苗育苗に努めている(栽培面積の81%導入)。また、いちごについては労働時間が長く、腰痛を伴なう中腰作業が多いことや、高齢化が進み生産者が減少しつつある中、高設栽培システムを導入し、栽培管理の省力化と労働負担の軽減を図り、高齢者や女性でも安定生産できる栽培方法として推進しています。あわせて、規模拡大や新規生産者への推進を図っています。
なお、高設栽培システムについては、現在4戸48aであるが、平成12年度は、62aの導入を予定しています。

また、従来まで使用していた農ビから クリンテートDXに転換を図り、フィルム展張時の作業が軽減され生産者から喜ばれております。農ビと比べ、汚れにくく、風にも強い点が、生産者に使っていいただける要因であると思います。心配されていた苺の生育性にも問題はなく普及しつつあります。
JAふくおか嘉穂園芸課倉智正徳さんから話を聞かせていただきましたが、共選・共販は全戸にファックスを導入して有利販売を図るとともに、生産資材はJAより共同購入されています。

がんばる!クリンテート家族
イチゴ水耕促成栽培でクリンテートハウス栃木県壬生町(JAしもつけ)
木村 貫一 さん

わたしはイチゴ(とちおとめ)のポット・水耕、夜冷育苗促成栽培にクリンテートを使用しています。わたしのハウスは間口6m×53mほか9棟、栽培面積25aで、作型は、9月上・中旬定植、11月上旬収穫です。
栃木県下はまだ農ビが多い中で早くからクリンテートの特長をつかみ栽培に役立てています。その特長を列記すると次のとおりです。
作物の成育状況は農ビと比較しても差はなく、また散乱光による光線で南側と北側における生育の差が少ない点です。
栽培上の優位点は散乱光による光線透過のため着色にムラがなく黒ずみが少なく、また換気時における湿度の下がりが早い点です。

イチゴ水耕促成栽培被覆時における利点は、温度によるべたつきがないため展張が楽であり、バンドレス被覆のため展張に費やす労力が軽減できる点です。
その他の利点としても室内温度は農ビと変わらなくても散乱光のため人・作物ともやさしく感じることです。
課題としては、硫黄系の薬剤使用する点ですが、特にクリンテートDXはその点も対策済みとのことで、安心しています。今後も生産者の必要とする製品作りをお願いします。

JA香取西部をたずねて-トンネル人参・ダイコン栽培で作物部会を通じてクリンテートの予約受注-JA香取西部は、我が千葉工場の近隣JAで、1985年の千葉工場開設以前から懇意にしていただいておりまして、今回購買課宮川課長代理、浅野係長と指導課東係長にトンネル人参・ダイコン栽培でのクリンテートの特徴についてお話を聞かせていただきました。
JA香取西部は、サツマイモ栽培で有名ですが、人参、ダイコンもトンネル栽培で基幹作物となっています。

JA香取西部の注文書・アグリマニュアルJA香取西部の注文書・アグリマニュアル 購買課では、毎年10月に園芸部のかんしょ、人参やダイコンなど700名を越える部会員を有する50支部の各作物部会を通じて、農家に種子・資材注文書を配布して、予約注文の取りまとめを行っており、各作物部会毎の栽培研修会等での部会員の意見・要望を聞きながら、スムーズな資材の供給を行っています。 また、指導課では、毎月「食糧・農業・農村を守るアグリマニュアル」を発行し、営農指導、栽培指導をきめ細かに行っており、農家から高い評価を受けています。 クリンテートについては、ビニールと比較し、長持ちする、徒長しにくく、葉がしっかりするので葉の病気になりにくい、ハウス内が乾燥するような感じがする、フィルムに穴を開けて天井換気が出来る(ビニールだと破けてしまう)などの特長があり、農家からも喜ばれているとのことで、今後ともクリンテート使用農家が増えるよう品質向上に努めて行きます。 (東京営業所嶋崎記)

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