NO.21冬季号 2004年12月1日発行

農POと作物づくり ハウスミカンでの近紫外線カットフィルム利用長崎県果樹試験場 病害虫科
研究員 宮崎俊英

被害果写真1 被害果 長崎県におけるハウスミカン栽培面積は82.5haで、全国でも5番目の生産量があります。このハウスミカンの病害虫問題で大きいのが、アザミウマ類の被害です。長崎県では平成10年7月にミカンキイロアザミウマが確認され、翌年の調査で県内のハウスミカンの約4分の1で被害が確認されています。 現在も被害が続いている難防除害虫です。被害は果実が隣の果実や葉に接した部分に多く見られ、果皮に白色かすり状の傷を生じさせます。加害が激しいものは果頂部から果側部まで全面に発生し、商品価値を落とします(写真1)。

調査ハウス内写真2 調査ハウス内 ハウスミカンを加害するアザミウマ類には本種の他にヒラズハナアザミウマ、ハナアザミウマ、ネギアザミウマなどが知られています。これらのアザミウマ類は薬剤抵抗性が発達していることが多く、また加害時期も果実の着色はじめから収穫までと長期間で薬剤のみで被害を防ぐことは困難です。 そこで、近紫外線カットフィルムによる物理的防除を活用し被害軽減を図る目的で現地実証試験を実施しています(写真2)。 調査はハウスの内部に設置した黄色、青色の粘着トラップを用い比較しました。

今までの試験では近紫外線カットフィルム区での捕獲数は調査期間を通じて対照のポリフィルム区の約1/2でした。(表1)

(表1) 粘着板へのアザミウマ類誘殺数の推移(表1) 粘着板へのアザミウマ類誘殺数の推移

ハウス外部でのアザミウマ類の発生状況は試験区側に比べ対照区側の約2倍発生していることを考慮すればさらに差がでているのかもしれません。近紫外線を少なくすることでアザミウマ類の行動が抑制される効果があるとされていますが、この試験でもその効果が確認されました。なお、この試験で主に捕獲されたアザミウマはミカンキイロアザミウマとネギアザミウマでした。

果実品質の調査では、近紫外線カットフィルム区とポリフィルム区で着色、糖、酸に違いはありませんでした。

富士ゼロックス社製のUVcaremate(測定波長領域280~410nm)によりハウス内部と外部の紫外線強度を測定したところ、紫外線量は天候が晴れ若しくは曇りだと外部に比べポリフィルム区で40%、近紫外線カットフィルム区で10%に減少していました。また、6月下旬に下温処理のためハウス屋根面に寒冷紗を被覆していますが、寒冷紗を追加した時の紫外線量は外部に比べポリフィルム区で14%、近紫外線カットフィルム区で4%まで減少していました(図1)。

(図1) 紫外線量の推移(図1) 紫外線量の推移

ハウスミカンでのアザミウマ類防除対策として過去の試験例から、(1)1mm目の防虫ネットの使用、(2)光反射マルチの使用が知られていますが、これらに追加して近紫外線カットフィルムを導入することにより更に被害軽減が図れ、減農薬栽培につながる可能性が期待されます。

がんばる!クリンテート家族
クリンテートで"小松菜"栽培農業生産法人
株式会社ナガホリ(JA上尾市)
代表取締役 永堀吉彦さん

小松菜の選別出荷場前での永堀社長さん小松菜の選別出荷場前での永堀社長さん株式会社ナガホリは、埼玉県上尾市を中心に小松菜の栽培と言うより"生産"を行っています。その栽培規模は上尾市・さいたま市・桶川市・川越市にまたがり小松菜の生産面積は現在97haにのぼります。来年にはその面積は150haに拡大の予定だそうです。
その運営・管理を行っているのが永堀社長です。社長のお話によると株式会社ナガホリでは荒地を開墾し農地によみがえらせているとのことです。荒れ放題になっている土地を借りて自ら雑草や放置されたまま木々を伐採し、見事に小松菜の生産ができる生きた土地に蘇らせそして安定した小松菜の供給を実現なさっています。

冗談交じりに社長は今では開墾し土地を蘇らせる事が本業で得意な仕事だとおっしゃていました。
小松菜の生産にクリンテート有孔2号がトンネル用に使用されています。また昨年11月には11棟のハウスに クリンテートEXを展張されています(0.13)。5年使用予定で現在のところ順調に推移しています。今後の新設ハウスにも採用をお願いしています。
クリンテートについての感想をお伺いしたところ、特に支障もなく今後も使っていく予定と言っていただいています。
さて、今後も増えて150haもの作付面積の管理はというと、社長と社員の方々やアルバイトの方々が同じ意識を持ち見事に栽培から出荷まで行われています。よって、市場からの信頼も高く、その品質と安定した生産量により安易な価格競争に巻き込まれることもなく、安定経営が実行されています。 
今回クリンテートだよりの取材で、短い時間でしたが社長さんの話を聞いて、これからの農業経営の方向性が見えたような思いがしました。都市近郊でも土地を蘇らせてることによって、新たな生産農地を開発し、農業経営を実現している永堀社長は今後も新しい農業経営パイオニアとして活躍なさるであろうと確信しました。
埼玉県は、系統代行店の池上ビニール工業有限会社が取扱されており、池上社長と永堀社長とのお付き合いも長く、よりよい協力関係でクリンテートを薦めていただいており大変感謝しています。今後とも品質改善等のアドバイスをいただきたくよろしくお願いいたします。
(埼玉県担当 西田)

がんばる!クリンテート家族
JA南国・高知ビニール共同加工場を訪ねてクリンテートを加工中クリンテートを加工中今回、高知県でクリンテート・農ビを加工し、歴史の古い「JA南国・高知ビニール共同加工場」をご紹介させていただきます。
南国市は高知県の中央部にあり、土佐の稲作発祥の地といわれ、現在は施設栽培で"ししとう""大葉""にら"等の栽培が盛んな地区であります。
最寄りの駅はJR後免駅(ごめん)から車で約5分、高知龍馬空港(平成15年名称変更)からだと車で約2分の所に位置しています。
この加工場は、JA南国市・JA高知市の共同出資で昭和61年に旧農協出荷場を改造し農協共同加工場として開設されました。

また、クリンテートも昭和61年の加工場スタートと同時に取り扱われ、二代目にあたる、元吉美恵場長を筆頭に職員3名、JA高知市からの出向者1名、パートさん6名を含め全10名で加工を行い、今では管内の加工はもちろん、管外のJA分も加工し、施設園芸農家にとってなくてはならない加工場です。
工場設備としては、解反専用機1台・高周波1台・熱溶着機1台・ハトメ打機2台・ウェルダー1台を駆使しながら良い製品作りを心掛けています。
クリンテートを加工中加工場のみなさん、はいチーズ加工場の皆様は、さすが土佐っ子、心は太平洋のように広く気さくな方ばかりで、いつも笑顔が絶えない元気ある職場です。
加工場皆様の活力が、更なるクリンテート拡販へ繋がると痛感いたしました。
また、全農こうち県本部の各地区担当者と各JA担当者との連携で当社のクリンテートの拡販も心強い後ろ盾となっています。
(高知県営業担当 桑原記)

クリンちゃんの豆知識
内分泌(エンドクリン)かく乱化学物質
かく乱化学物質私たち人間は、これまで自然界には存在しなかったたくさんの種類の化学物質を合成して作り出し、利用してきました。これらの物質の中には、その構造が生物体内のホルモンと似ているものがあります。それが生物体内に取り込まれてホルモンと間違われ、本来のホルモンの働きを狂わせることがわかってきました。通称「環境ホルモン」、正しくは「内分泌かく乱化学物質」と呼ばれます。
この問題が犬きな社会的関心を集めるようになったきっかけは、1996年にテオ・コルポーン榑士らの『奪われし未来』、1997年にデボラ・カドバリー女史の『メス化する自然』という書物が出版されたことでした。

かく乱物質の中には女性ホルモンに似たものが多いため、オスがメス化する異常が起きています。人闇への影饗も懸念されていて、男性の精子が減少したり、男子の出生率が低下するなどの報告があります。さらに深刻な影響は先天性奇形の多発です。かく乱物質の影響は、子どもや胎児に対してより強く作用し、生涯にわたって残ります。
かく乱物質として、DDTやBHCを含む有機塩素系農薬、プラスチック類の燃焼時に発生するダイオキシン類、工業用洗剤として使われるノニルフェノール、塩ビの可塑剤として使われるフタル酸エステル類などがあります。
現代生活の便利さとほんとうの安全について学ぴ、見直すことが必要ですね。
『沈黙の春』レイチェル・カーソン著(1962年)
その年の春はやけに静かだった。
花も咲かず、鳥も囀らず、木々も芽吹かず。
騒がしいはずの校内ですら生徒達も大人しくて。
やがてくる恐るべき未来を皆が予知していたのかのように。
それでも日々は過ぎていく。
そんな未来をあずかり知らぬ者達の手によって。
(参考文献:小島覚著「よくわかる環境の話」)

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