NO.43秋季号 2010年9月15日発行

地産地消の拠点として生長し続ける大型農産物直売所元JA全農 営農・技術センター
技術主管 林 英明

日本の農業は、農業従事者の高齢化や農産物価格の低迷など大変厳しい状況にあります。都市化の著しい南関東でも、農業後継者の不足や農業経営規模の縮小・零細化などから農地の利用・管理が過疎化し、相対的な農業生産能力の低下が進行しています。そうした中で農産物の直売所が地域の農業を守り、振興する上で大きな成果をあげています。ここでは農業協同組合が運営する規模の大きい直売所を紹介します。

直売所のあるのは東京から自動車で1時間半、人口17万人の首都圏近郊都市です。山と丘陵に囲まれた盆地で園芸または酪農を中心とした農業経営が行われています。

農産物直売所の設立の背景とねらい農産物直売所の設立の背景とねらい農協が運営する農産物直営所は地産地消を推進する拠点です。ご存知のように地産地消は「地元生産地元消費」の略称で、その地域で作られた農産物を農産物直売所その地域で消費することです。

近年、輸入野菜の農薬汚染問題や遺伝子組み換え食品の安全性に関する疑念などから、食に対する不安が広がっています。そうした中で、生産者の顔が見える関係で生産された、新鮮で安心・安全な農産物を手ごろな値段で手に入れたいと思っている消費者が多くなっています。

直売所はそのような消費ニーズに応え、流通経費を少なくして生産者の手取りを多くするために設立されました。

直売所の運営直売所は、「地元の消費者を対象にした消費者目線の品揃え」と「高齢者や女性、小規模兼業農家など多様な生産者が参加できる直売所」ということを柱にすえて運営されています。具体的には次のようなことが行われています。

  1. 販売は委託販売方式で、売れ残りは、毎日、生産者がその日の内に引き取る。
  2. 利用者の利便性の向上をはかるため、野菜、果実、花き、畜産物、手作り加工品、家庭菜園むけ種子・苗など多品目を品揃え。
  3. 売り場に荷がなくならないようにするため、生産者は外部から携帯電話で売り場にある現在数量を確認し、必要に応じて追加出荷。
  4. 農協の組織力を生かした運営
    農協婦人部による農産物の調理法の紹介。家畜糞堆肥の斡旋。直売向け栽培マニュアルの配布。環境保全型農業の奨励。コンピュータシステムを利用した情報伝達。
  5. 消費者ニーズ(新鮮・安心・安全志向)への対応
    野菜の朝採りや追加出荷の奨励。生産者が引き取らない売れ残り荷の農協による処分。病害虫防除日誌の記帳の義務付け。外部検査機関による残留農薬のチェック。罰則規定をもうけて厳格な品質管理。

平成14年に売り場面積450平方mで始まった直売所は、毎年、売上を20パーセント程度増やし続け、平成21年には売り場面積617平方mm、年間売上は10億円を超えました。

地産地消この直売所のある市では行政・農協・農業委員会が一体となって農業の担い手の育成を行っています。「市民農業塾」の講義と実習で、野菜の栽培技術や地元農産物の加工技術を身に付けた人を育てています。これまでに、市民農業塾を修了して新規に農業を始めた27名の人が農協の直売所に出荷しています。

地産地消は地域の農産物と農業に対する理解・関心を高め、住民の連帯感を涵養して、地域を活性化します。地域が一体となって取り組むのがポイントのようです。

がんばる!クリンテート家族
クリンテートDXでブランドスイカの栽培熊本県熊本市植木町(JA鹿本)
堀 幸明さん

西瓜日本一の生産量を誇り、西南の役の激戦地・田原坂でも知られる植木町は、今年の3月23日に熊本市と合併し、二年後の政令指定都市を目指す市の北の玄関口として新しいスタートをきりました。
同時に植木町の西瓜生産者組織の皆さんは『夢大地かもと』の地域ブランドを確立して、更なる発展と進化を目指し熊本市の一員として、地域の振興に繋げたいと頑張っておられます。

今回は、そんな植木町の田原地区で30年余り西瓜栽培に取り組んでおられる堀さん一家をご紹介します。ご家族は幸明さんの奥様とお母様、8年前に就農され昨年秋に結婚された長男さんご夫妻の5人です。
収穫したスイカを「手に堀さん一家収穫したスイカを「手に堀さん一家施設は連棟ハウス1ha、単棟ハウス10aで主に西瓜と胡瓜を栽培されています。作型は春西瓜(収穫期4月~6月)、秋西瓜(収穫期10月~11月)、夏胡瓜(収穫期7月~8月)、秋胡瓜(収穫期10月~12月)の4タイプです。
当初は全棟に農ビを使用されていましたが、クリンテートDXは破れが広がりにくいとの評判を聞き、まずサイド用のフィルムから替えたところ、とても気に入っていただきました。10年ほど前からは、天井にも使用して頂くようになり、今では殆んどのハウスにクリンテートDXをお使いいただいております。堀さんは「軽くて、風に強く破れ難いので安心して使っているよ」と太鼓判を押して頂いています。

今後も、生産者の皆様に安心して使っていただける品質の良いフィルムと、細かなサービスの提供に心がけたいと思います。
この度は、春西瓜収穫の大変お忙しい時期にも拘らず、取材にご協力頂き誠にありがとうございました。
(栃木県営業担当 鈴木記)

がんばる!クリンテート家族
ミニトマトづくり25年 長期展張EXでコスト削減愛知県豊橋市(JA豊橋)
高嶋 賢一さん

愛知県豊橋市は、東三河の人口の過半数を占める中核市であり、キャベツやはくさいの生産が盛んな農業地帯です。農産物の大消費地である関東・関西の中間に位置している為、物流条件に恵まれた地帯でもあります。
今回は、その豊橋市でミニトマトを生産している高嶋賢一さんを紹介します。
ミニトマトの品種はイエローミミでフルーツのように甘く、黄色のかわいいトマトです。

ハウスの前で笑顔の高嶋さんハウスの前で笑顔の高嶋さん高嶋さんがクリンテートを使いはじめたのは、20年前ごろからです。JA職員から「強くて・丈夫で長持ち・品質も安心」とクリンテートを勧められたのがきっかけです。
以前は、ビニールを使用していましたが、クリンテートに切り替えてから作物の出来栄え(品質)も良くなったそうです。
現在は、長期展張用のEXEX-UVを使っていただいている為、張り替えサイクルが延び、また、強度、流滴性、透光性、保温力もあることから、加温の経費を抑えることができ、生産コスト削減につながっています。

現在、高嶋さんは8棟のハウスを所有し、ご両親と3人で収穫に忙しい毎日を送っておられます。
昨年の台風で豊橋市は、ハウスが潰れるなど大きな被害を受けましたが、高嶋さんのハウスは幸い被害も軽く、作物にあまり影響もなく出荷を続けることが出来ました。

今後もクリンテートを末永くご利用していただき、ご意見を聞かせていただきたいと思います。
(愛知県営業担当 諸冨記)

クリンちゃんの豆知識
ひまわり今年の夏は記録的な猛暑でしたが、植物にとっても過ごしづらい夏だったに違いありません。野菜栽培では、保温のためのハウス利用が一般的となり、野菜は寒ささえ対策すれば夏は大丈夫、と思っていませんか?
特に夏が旬の野菜は、暑いほうがよく育つと思われがちです。でも実は、トマト20~25°C、ナス23~28°C、キュウリ23~28°Cが生育適温とされています。しかもこれら3つの野菜について、生育に障害が出る恐れのある最高限界温度は、どれも35°Cとなっています。今年の夏は、夏野菜にとっても厳しい環境だったと言えます。一方、価格が高騰した青物野菜の例えばホウレンソウやレタスの最高限界温度は25°Cで、もともと夏の栽培が難しいものでした。
主な高温障害としては、花粉の機能低下があり、着果に障害が出ることから、収量や品質の低下を招きます。また高温環境では害虫や病気が発生しやすく、被害が大きくなる恐れもあります。異常気象で一時的に収量が減っているとは言え、そんな適温の制約を超えて、どの野菜も一年中流通しているのは、栽培技術の向上や品種改良の進歩と、農家さんのきめ細かな管理のおかげですね。
冷夏で減収が取りざたされることが多い米は、「日照りに不作なし」などと言われていますが、実は、暑すぎると高温登熟障害という問題があります。特に夜間の気温が高い場合に影響が出やすい傾向にあり、今年の米の品質が気になるところです。
早いところでは、もうお米の収穫が始まっていますね。秋の味覚を楽しみに、残暑を乗り切りましょう!

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