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クリンテートだより 環境にやさしい新しい営農を提案する
NO.44 春季号
2011年3月1日発行
 
花きの効率的生産技術開発におけるEOD反応活用の可能性
(独)農業・食品産業技術総合研究機構
花き研究所 農学博士 久松 完

1.はじめに

 日本では四季の変化に対応した高度な生育開花調節技術を駆使した施設園芸が発展してきました。現在、日本の花き生産において施設園芸は非常に重要な位置を占めています。しかし、日本の施設花き生産は、設備投資や零細な経営規模に由来する生産効率の問題等により生産コスト面での国際競争力が弱い問題があります。花きは完全自由化品目であり、近年、アジア諸国をはじめとする海外の大産地から切り花の輸入が急増し、品目によっては輸入品の増加が、国内生産基盤を揺るがしかねない状況になっています。切り花輸入増大とともに昨今の原油価格高騰等による生産コストの上昇により、その経営がさらに圧迫されています。現況を打開するためには、現行よりも効率的な生産技術を早急に開発し、生産コストの低減による効率的な安定生産体制の確立が急務となっています。このような情勢の下、我々は花き類の効率的生産体系の確立を目的とし、End of Day (EOD)反応を活用した花きの省エネルギー型栽培技術開発に取り組んでいます。ここでは、その取り組みの一部を紹介します。


2.“EOD反応”とは

EOD反応とは

 植物は光を光合成におけるエネルギー源として利用するだけでなく、光形態形成に関する情報源として利用し、その生育制御に役立てています。赤色光(R ; 600 – 700 nmの波長域の光)~遠赤色光(FR; 700 - 800 nmの波長域の光)を主に感知するフィトクロムと呼ばれる光受容センサーは、植物の様々な成長調節に関与していることが知られています。例えば、明期終了時(End of Day:EOD)に受けるR光やFR光の刺激により調節される伸長・開花反応があります。このフィトクロムを介した反応は“EOD 反応”と呼ばれ、その反応の起こる仕組みについて研究が盛んに行われてきました。また、我々は草丈伸長調節技術として着目された昼夜温管理方法“DIF”に関する取り組みの中、数種の花き類で日没後の時間帯(End of Day:EOD)での短時間昇温処理が、到花日数の短縮に有効であることを発見しました。そこで、明期終了後の短時間光照射ならびに短時間昇温によって引き起こされる植物の生育反応をあわせて“EOD反応”と呼び、この“EOD反応”をキーテクノロジーとした新たな生育調節技術の開発を目指しています。

3.“EOD-lighting”の活用

EOD-FRによる伸長促進効果 “EOD反応”のうち光反応については、フィトクロム反応を介した明期終了後の短時間遠赤色光(FR)照射(EOD-FR)による伸長の促進と開花の促進に着目して研究に取り組んできました。まず、キクについて研究を開始し、キクの茎伸長についてもEOD-FR処理による伸長促進効果があること、その効果における植物ホルモン、ジベレリンの関与を明らかにしました。そして、スプレーギクについて、温室条件において短日処理後のEOD-FR処理により草丈の確保ができ、草丈確保に必要な栄養生長期間(長日期間)の短縮が可能であることがわかりました。この技術の導入により一作当たりの栽培期間が短縮でき施設回転率の向上につながることが期待されます。また、長日植物のストック、キンギョソウ、トルコギキョウなどでは、伸長促進とともに開花促進効果が確認されました。このようにEOD-FR処理は、新しい電照技術に発展することが期待されます。ただし、現状は近い将来の実用的なFR光源の開発を待つ状況にあります。

4.“EOD-heating”の活用

 数種の花き類で発見した日没後の短時間昇温処理により開花が早まる反応を利用した変夜温管理技術を確立できれば、消費燃料の削減ならびに施設利用率の向上による経営の効率化に繋がることが期待されます。私たちは、この変夜温管理を日没の時間帯に積極的な加温を行う温度管理であることから“EOD-heating”と呼んでいます。これまでに、温室条件下でスプレーギク、トルコギキョウを中心として、夕方以降の数時間を積極的に加温し、以後を慣行よりも低温で管理することを基本として、加温設定温度、時間の検討を行ってきました。その結果、スプレーギクでは省エネ管理でありながら慣行と同等の切り花が収穫できました。また、トルコギキョウでは当初の想定以上の“EOD-heating”効果を得ることができました。今後、地域適応性の検証を進めるとともに、適用品目の拡大へと展開していくことを期待しています。

5.おわりに

 国際競争力のある国内花き生産体制を確立するためには、現行の生産から消費までの一連の過程を点検し、消費形態にあった効率安定生産システムの構築を目指すことが重要であると思います。ここで紹介した“EOD反応”の活用は、生産コストの低減に貢献し、海外からの輸入切り花に対抗できる生産性の向上に資する一つの方策になると期待しています。

EOD反応の活用

 

グローマスターで農薬散布が半減!~玉森さんちのニラ栽培~
北海道上磯郡知内町(JA新はこだて知内)
玉森 健さん

 今回お伺いしたのは、ニラと牡蠣と北島三郎が育った町、知内町(しりうち)です。知内町は北海道の南端、渡島半島の南西に位置し、東側は津軽海峡を隔てて青森県下北半島を望みます。本州と北海道を結び、ついこの間まで世界最長のトンネルだった「青函トンネル」の北海道側出入口の町です。(スイスに抜かれた!)気候は、北海道としては温和です。夏は涼しく冬は比較的暖かい、農業に適した気候環境です。

JA新はこだて知内 玉森 健さん この知内町で農業を営む玉森健さんに「北海道一の生産量を誇るニラ」そして「クリンテート」についてお話をお伺いしました。 玉森さんは畑作の他に40棟のハウスでトマトとニラを育てています。 知内のニラは、ブランド「北の華」でご存知の方も多いはず。葉の幅が広く、肉厚で、甘く柔らかいのが特長です。全国的にも高い評価を受け、販売高も昨年初めて10億円を突破しました。玉森さんとクリンテートとの出会いは、6~7年前に遡ります。スリップス対策に紫外線カットフィルム「クリンテートGM(グローマスター)」を紹介されたのが最初でした。知内のニラは全てハウス栽培です。加温ハウス栽培をはじめとした春採りの「前期ニラ」から夏秋採りの「後期ニラ」まで、ほぼ一年中栽培されています。その内「後期ニラ」でスリップスの被害が後を絶ちませんでした。「できるだけ薬を使いたくない」との思いもありグローマスターをハウスに展張したところ、通常4回の農薬散布が2回に半減。その効果を目の当たりにしました。以後、ハウスフィルムはグローマスターに順次更新、今では所有する全てのニラとトマトのハウスにグローマスターを展張しています。「クリンテートは他の農POより保温力もあり、柔らかく扱い易い。」「グローマスターとの出会い。とても感謝している。」玉森さんは満面の笑みで語ってくれました。また昨年発売になった、ハウスの雪落ちを促進させる滑雪フィルム「クリンテートSN(スノー)」についても、「冬の太陽光線は貴重。多ければ多いほどニラの生育が早くなる」とその滑雪効果に期待しています。

 組合員同士が協力して毎年11月に行なう、ニラハウス共同フィルム張替作業から新しいシーズンが始まります。真新しいクリンテートで守られた知内ニラ「北の華」は、特有の刺激的な甘い香りを発しながら、今もグングン育っています。

(北海道営業所 川越)


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