NO.2春季号 2000年3月1日発行

農POと作物づくり全農営農総合対策部 生産資材研究室
技術主管 林 英明

前回は農POの光学的特性についてのべましたが、今回はハウス栽培の生産性に大きく影響するフィルムの保温性と、病害の発生などに関係する流滴性を取り上げます。

保温性被覆栽培の目的の一つに寒さから保護して作物を栽培するということがありますが、低温期に保温性の悪いフィルムを使用すると、無加温ハウスでは思ったように作物が生育しませんし、加温ハウスでは燃料費が多くかかります。保温性は光線透過性と並んでハウスやトンネルに使用するフィルムの最重要性質の一つです。

ハウス内の温度変化をみると、低温期には普通、昼間は太陽光を吸収して温度が上昇し、夜はハウスの外に熱が放出されて温度が下がります。熱は、換気や、フィルム表面から外気への伝熱、遠赤外線の形でのフィルム透過でハウスから出ていきますが、密閉した夜間のハウスでは遠赤外線の形で逃げていくのがほとんどだと言われています。したがって、透明なフィルムでは赤外線を多く吸収して外に出さないものが保温性の良いフィルムということになります。

クリンテートハウスの小松菜栽培クリンテートハウスの小松菜栽培 農ポリと農サクビはポリオレフィン系のフィルムですが、これらは農ビに比較して保温性が劣っていたため、ハウスの外張り用に使用されることは少なかったわけですが、保温性の向上を大きな改良目標として開発されたポリオレフィン系のフィルムが農POです。 農POはポリエチレンやエチレン-酢酸ビニル共重合体を原料にしたフィルムですが、最近はクリンテートDXのように農ビに負けないか、むしろ農ビより保温性の高い農POが開発されています。 保温性の高い農POは赤外線吸収率を高めるためにプラスチックに保温剤が添加されています。そのため保温性の高い農POはフィルムの透視感が若干悪くなっていますが、透視性が落ちるのはフィルムを通過する光の中で散乱光の割合が多くなったためです。散乱光の割合が多くなっても透過する光の量と質が変わらなければ、作物の生育が悪くなることはありません。

これまでの研究結果によると、散乱光の割合の多い方がかえって作物の生育には良いと言われています。とかく透視感の良いフィルムが好まれる傾向がありますが、農POについては、透視感だけでフィルムを選ぶのはやめましょう。透視感と保温性の関係を良く理解して、栽培する作物に適したフィルムを選択することが重要です。農POは赤外線の吸収能によって、保温性の非常に高い農PO(EEと表示)、保温性の高い農PO(E)、中程度の農PO(M)、保温性を抑制した農PO(D)に区分されています。

流滴性ハウス内は屋外よりも高温多湿です。とくに温度の日変化の大きい秋から春にかけては霧が発生したり、天井のフィルムの表面で結露することが多くなります。霧やフィルムから落ちてくる水滴で作物が濡れると病気が発生しやすくなります。また、朝方の霧やフィルム表面の結露は葉に当たる日光を少なくして、作物の光合成を抑制します。

こうした環境下で、フィルムの流滴性は、病害の発生防止や透過光の減少防止のために、大変重要です。流滴性というのはフィルム表面の結露水を水膜状にして流下させる性質ですが、流滴性の良いフィルムを使用すると結露水を薄い水膜状にして速やかに流し去ります。結露水がどんどん流れてハウス側面下の土壌に浸透すると、ハウス内の空気湿度は低下します。

流滴性を良くするために、農POには流滴剤が練り込まれたり塗布されたりしています。練り込みタイプは流滴剤がフィルム表面に移行して、水滴の滞留や落下を防止しますが、これに使われる流滴剤には多くの種類があり、ものによってはフィルム表面で結晶化して白く粉を吹いたようになったり、逆にすぐ溶けだしてなくなってしまうものもあるので注意する必要があります。練り込み法は1~2年で張り替える農POに使われています。三善加工のクリンテートマーキュリーなどは工場生産の際に流滴剤が塗布されます。流滴剤を塗布するタイプは、水に溶けて流れることがなく流滴性が長期間安定しています。

がんばる!クリンテート家族
土づくり重視の切り花・キュウリ栽培で高品質、ブランド販売実現富山県入善町(JA入善町)
福島 幸雄 さん

私は、平成11年11月の全農主催「第26回全国施設園芸共進会」において、日本施設園芸協会長賞を受賞することが出来ました。ご支援していただいた皆様に厚くお礼申し上げます。
さて、我が家では、2年ほど前からクリンテートを導入していますが、フィルムの話の前に私の経営内容をご紹介します。
施設は、栽培と育苗ハウスがあり、大口径パイプハウス2棟と小型パイプハウスが、クリンテートで、H型鉄骨大型ハウスに農ビを被覆しており、合計面積37.2aです。
作物は、前作が半促成キュウリ(新川キュウリで1/中~2/下に播種、2/下~4/上)に定植、4/上~7/中に収穫しています。後作物が電照菊(黒東電照菊)で7/下~8/上に定植、11/中~12/下に収穫しています。その後、一部ハウスを利用して10aほどチューリップの切り花が入り、1/中~3/下まで出荷しています。露地では、9/中~11/中まで転作田で120aほどカリフラワーの栽培・収穫をしています。

福島幸雄さんクリンテートは、農ビに比べて軽くて粘りがあり、天張りし易く強風でも安心しています。また、サイドのクルクル等にもくっつきがなく、開閉が楽に出来助かります。
我が家は海に近いため、雪の方はそれ程でもないのですが、一年中風が強く特に春先のフェーン現象の暑い風が吹くと今までの農ビですと伸びて何度か破損につながることもありました。クリンテートはその点伸びないフィルムなので、風に強いのが最大の魅力です。
春のキュウリ栽培等では、農ビより少し湿度の保ちが悪いようなことも言われますが、さほどのことはないように思われます。
菊などでは、ボタ落ちがないため、病気や軟弱徒長に成らず、特にビーナイン(矮化剤)等の効果も良いようです。
我が家では、使用していませんが、昨今の菊のサビ病予防剤で硫黄を溶かして成分を飛ばす「こなでん」と言う予防装置があります。これに対して農POフィルムは農ビより弱かったようです。が、近年クリンテートは改良され、イオウ系農薬に大丈夫と聞き、安心しています。
これからの農業(施設園芸)は、特に環境問題には注意をしなくてはなりません。処理し易いフィルムが求められる時代だと思われます。
より強く保温性が高く、ゴミ処理のし易いフィルムをどの業界の方々も念頭において新しく開発していただきたいと要望いたします。
(全国施設園芸共進会受賞業績より抜粋)

創刊に寄せて住化プラステック株式会社
代表取締役社長 角五 正弘

日頃はクリンテートをご愛用いただきましてまことにありがとうございます。お使いいただいているクリンテートの産みの親が、わたしども住化プラステックです。3年前に住友化学からプラスチック加工製品を製造、販売する部門が分社化されて誕生いたしました。

21世紀も間近に迫り、夢がふくらみますが、一方、地球環境を守ることがますます重要な課題となってきています。そのなかで、クリーンなエネルギー源として太陽光が注目され、その利用が進められています。

農業用のハウスは言うまでもなく、昼間の太陽エネルギーを夜間利用しようというシステムです。そのために、わたしどもはせっかく貯えたエネルギーを逃がさないように、保温性が高く、しかも軽くて取り扱い易い クリンテートDXを他社に先駆けて開発し、みなさまにご愛用いただいております。

また廃棄物を減らすため、長期にお使いいただける長期展張型クリンテートマーキュリーもみなさまのご好評をいただいております。

私どもは、みなさまのご要望にお応えしようと日夜努力を続けておりますが、今も、新しいクリンテートの卵たちが、当杜の開発陣によって育てられています。

これからもみなさまのご意見、ご要望をお聞かせいただき、さらにご期待に沿うクリンテートを開発してまいります。これからもどうぞご期待ください。

クリンテートだよりに期待するJA全農資材・農機部
農業資材課長 築部 孝

それは、18,19年前のことになりましょうか。私は、茨城県鹿行の座談会で、生産者の皆様方からの「張ると白くなるぞ」、「ボタ落ちするぞ」との新しいフィルムに対する評価を前に、身の縮む思いで応対しておりました。

以降、現地での数多くのご意見をいただきながら、農POフィルムのパイオニアとして、品質改善、新品種開発が図られ、現在のクリンテート製品群が作り上げられてまいりました。

全農は、今、施設園芸で課題となっている省力・快適・低コスト・環境にやさしいということに役立つ資材・機器の供給をすすめています。クリンテートは、まさに、これらのテーマに見合った系統取扱製品の一つであり、多様な生産場面での利用を提案しています。

「より良い製品ほど、より多く使われる」は真理ではありますが、今や、逆の方が真実味があるようです。クリンテートだよりが、生産者の皆様方のニーズに応える場として、また、営農・生産の一つの標となるよう関係者のご努力に期待する次第です。

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