NO.11夏季号 2002年6月1日発行

農POと作物づくり-ハウス抑制作型を見直そう(キュウリ10t穫りは難しくない)埼玉県農林総合研究センター園芸支所
支所長 稲山 光男

キュウリの生産動向をみると、篤農家によってハウス栽培が始まった、昭和30年代の後半はキュウリの栽培面積が約3,500haあり、その生産量は77万t(全国)であった。

当時は、露地栽培が主流であったことから、作期を少しでも早めることは、収益の向上につながり、ビニルハウスも急速な普及がみられた。

一方、露地栽培から施設栽培への移行やその後の社会環境の大きな変化の中で、担い手の減少や生産者の高齢化によって、現在の栽培面積は、30年代後半の50%に減少している。しかし、施設化と栽培技術の向上により、生産量は当時の生産量が確保されている。

キュウリの価格は年間平準化の方向にある施設栽培は、作期を前進化させることで収益性を求め、技術的にも施設の装置化も発展した経緯がある。
このことは、市場価格の動向をみても当然のことながら、供給量の少い冬期を中心に高値で流通され、露地栽培が可能な夏期は価格的に安値で取引きされる背景によるものである。しかし、このような傾向に最近は、変化がみられ年間の時期的な価格差が小さくなっている。

また、施設栽培が導入された当時のキュウリの価格をみると7~9月が安値で、高値期の5分の1であったが、近年は5~6月が安値月傾向にあり、年間の価格差は2分の1で年間の価格変動が小さい傾向にある。

は種期の前進化と生育抑制しない管理がポイントキュウリの抑制栽培の作型は、施設栽培の発展過程では、作期の前進化が重視される中で、裏作的な位置となり経営的にはあまり目を向けられる場面がなかった。
従って、抑制栽培の作期も変動することがなく、8月上旬(関東)が基準とされ、長いこと接ぎ木の普及も停滞傾向にあった。

このようなことから、収量も産地内での較差が大きく、目標収量が10a当たり4t程度の低い水準に置かれてきた。

抑制栽培は、葉が大きく、やや軟弱な生育のため日中の遮光も必要抑制栽培は、葉が大きく、やや軟弱な
生育のため日中の遮光も必要
もちろん、栽培条件としては高温下であったり、ウィルスのり病、台風などの被害条件が想定される作型ではある。 しかし、施設構造は改善され防虫ネット等の資材も入手が容易な時代に変わってきている。 流通の周年安定化と価格変動が小さい中で経営的に抑制作型での多収生産は、これまでのキュウリ生産の中で最も忘れられてきた作型で、作型に目を向けて取り組めば、気象条件からこれまでの目標収量とされた10a当たり4tの3倍量を収穫することは比較的可能なことである(表1)。

表1 播種期と収量表1 播種期と収量

栽培管理上の注意点高温期であることから、ウィルスのり病には万全を期する必要があり、は種時からの防虫ネット被覆の徹底は必須条件である。一方、育苗期の苗の徒長、定植後の節間伸長や葉が大きくなり易い点はある。

萎潤させないため若苗で被地に定植萎潤させないため若苗で被地に定植 このような生育に対し必要以上に制御すると生育抑制効果は得られても、その生育抑制が9~10月の生育に大きく影響して減収につながることになる。 例えぱ、若苗を定植し、定植床は十分灌水してから定植して、定植活着後は灌水を控えて土壌水分の低下に伴って根群の発達を深層へ誘導するような管理方法が重要である。 また、生育が早いことから整枝・摘葉管理は、収穫期に入るまでの栄養生長期の管理作業の遅れは好ましくない。

品質情報クリンテートDXが北海道の「指導参考」に今般、クリンテートDXについて、北海道におけるメロン栽培での「指導参考」となりました。私たち三善加工(株)および住化プラステック(株)が開発・発売しているクリンテートDXが農ビ同等の保温性とその実用性が確認されました。
概要は以下のとおりです。

1.目的農業用ポリオレフィンフィルム(以下、農POフィルム)は焼却時に有毒なガスの発生が少ないが、保温性は農業用塩化ビニルフィルム(以下、農ビ)に比較して劣るとされてきた。保温性を強化した農POフィルム(資材名:クリンテートDX)についてメロンハウス栽培における温度や湿度の推移の特徴、それがメロンの生育や収量に及ぼす影響を農ビと比較、検討し、その実用性を確認する。

2.供試資材農POフィルム「クリンテートDX」、対照資材::農ビ厚さともに0.1mm

3.調査年次および場所1998年上川農業試験場、2001年花・野菜技術センター

4.成果の概要

  1. 上川農試における5月中旬定植、8月上・中旬収穫のメロンハウス栽培の調査では、クリンテートDXはハウス内の気温は農ビと比較して、マルチ上1mではやや低かったが、マルチ上10cmでは差がなく、このためメロンの生育、収量には明らかな差は認められなかった。
  2. 花野枝セにおける5月下旬定植、8月中旬収穫のメロンハウス栽培の調査では、ハウス内の気温の推移、メロンの生育、収量ともにクリンテートDXおよび農ビに明らかな差は認められなかった。
  3. 花野枝セの10月上旬の閉鎖状態ハウスの調査では、夜間および曇雨天日の気温には両資材の差は認められなかった。しかし、晴天・日中の気温上昇が地上10cmでは差が認められなかったものの地上1mでは農ビで大きかった。これは、農ビの光線透過が「直達光型」であるのに対して農POフィルムでは「拡散光型」であることに起因したと考えられる。
  4. 農POフィルムハウスでは農ビハウスより乾燥しやすいとの指摘もあるため、ハウス内湿度の測定も行ったが、クリンテートDXで相対湿度が明らかに低いという事例は認められなかった。
  5. その他、従来からあげられている農POフィルムと農ビフィルム間の物性の差異は認められたが、クリンテートDXに展張作業時や栽培期間中の作業性、強度などで特に実用上支障となる間題点は観察されなかった。
  6. 以上、夜間および曇雨天時の気温の推移からクリンテートDXの保温性は農ビと同等であり、目中晴天時の換気が通常行われる時期のメロンハウス栽培ではクリンテートDXは農ビと同等のハウス被覆フィルムとしての実用性を有すると判断される。

図1 晴天日における密閉ハウス内の温度推移図1 晴天日における密閉ハウス内の温度推移

がんばる!クリンテート家族
クリンテートUFOで良品質のほうれん草生産千葉県多古町(JA多古町)
飯田 忠男 さん

私の町は、おいしいお米、多古米のとれるところで有名な多古町です。それから空の玄関成田空港に数キロと近いところです。
私は、ほうれん草の周年栽培をしています。

昭和63年より農ビハウス10棟から始め、平成元年に10棟追加し、その後年々追加し、現在では33棟となっていますがすべてほうれん草を栽培しています。
被覆資材は、すべて0.1厚のUFOを使用しています。

ほうれん草栽培ハウス前の飯田さんほうれん草栽培ハウス前の飯田さん私がクリンテートと出会ったのは、平成7年秋からです。農ビの場合、1年から1年半も使用すれば汚れがひどく、ハウス内は暗くトンネル状態になり、早い時では1年も経たずに交換張替をしていました。
我が家は人手不足のため、被覆資材の張替、ビニペットの取り付け、廃材の引き取りまですべて業者に委託したため、その時はかなりの出費となりましたが、これまでの農ビの時の張替のことを思うと楽になりました。
実際クリンテートを丸5年使用しましたが、さすがに4年目には洗浄して使用しました。その際灌水設備を更新し、栽培し易くなりました。
また、クリンテートは強度的にも申し分ないと思っていますが、透明度がもう少し持続してくれれば、言うことないです。

クリンテートは、光の入りも良く、湿度も持ちにくいのでほうれん草がしっかりと育ち、品質の良い物が収穫できます。我が家は、土づくりにも力を入れており、丈夫なほうれん草を作れば減農薬にもなるし、安全な物も提供出来るし、省力化にもつながります。
これからも納得の出来るものを作っていきたいと思っています。毎日が勉強です。

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