NO.18春季号 2004年3月1日発行

農POハウスを使った上手な花作り-冬から春ハウス管理-全農営農・技術センター
嘱託 並河 治

「冬は寒いから、ハウスを暖かくして花を育てるのだ」ということにあまりこだわってはいけません。図を見てください。これはあるカーネーションのハウスで、寒い曇天の日に、室内気温と室内の炭酸ガス(CO2)濃度を調べた結果です。

曇天日における温室内の気温、CO2濃度、相対湿度の変化(2月23日) 曇天日における温室内の気温、
CO2濃度、相対湿度の変化(2月23日)
夜の方が気温が高くなっているのは、夜間だけ暖房しているからです。 昼間は冬でも暖房しない人も結構いるので、このような例もあるかと思いますが、問題はCO2濃度の低下です。朝8時頃から急激に低下し、午後には外気(300ppm)の1/3まで下がっています。 冬の曇天日で気温が低くても、花が大量のCO2を吸収していることがわかるでしょう。 CO2を植物にしっかり吸わせることが、生育を良くする最大のポイントです。そのためには、朝は暖房をやや遅く切るとともに、気温がやや低くなったとしても換気をして、CO2濃度を外気に近くすることが大切です。

次にエチレンの問題があります。気温が低いからといってハウスを閉め切った状態にしておくと、ハウス中にエチレンが充満して、さまざまな悪さをします。スイートピーは特に敏感で、丸一日ハウスを閉め切ったままにしておくと、2~3日後には確実に落らい(つぼみが落ちてしまうこと)します。デルフィニウムやカスミソウも同様です。カーネーションでは花弁が開き切らない「眠り病」を起こしたり、花もちを極端に悪くしたりします。

換気が不十分だと空気湿度が高まるため、灰色かび病や、うどんこ病の発生も多くなります。特に灰色かび病は、空気湿度が高いと農薬で防ぐことはほとんど不可能です。天窓を開けたまま暖房して湿度を下げるのが、回避する最も有効な手段です。

ヤサイと違って、花弁のシミや小輪の花の落らいは、完全に商品価値を無くします。このように、天気が悪くても外気温が低くても、昼間の換気は花作りには欠かせません。上手に花を作る人は、換気と暖房を上手に組み合わせていることをご理解ください。

以上の点からも、保温性が良く、光が良く入るクリンテートEXは、冬の曇天日にもハウス内に光を良く取り込み気温低下が少ないので、花を冬から春にかけて栽培するのには適しています。またヤサイの場合より花にシミの出ることが少ない、くん煙剤を使うことが多いため、薬剤による劣化が少ないことも、この商品の特長かと思います。

がんばる!クリンテート家族
POフイルムとの出会い富山県朝日町(JAあさひ野)
藤田 慎一 さん

POフィルム発売のころは、未だハウスのフィルムはビニールが全盛であったが、三善加工の小坂武義氏の薦めにより、POフィルム「クリンテート」に出会い、まず試験展張ハウスを設けました。わが地区では初めての使用であったが、なによりも扱いやすく引っ張りに強いのが、一番の印象でありましたが、欠点も目につきました。
汚れやすいこと、スレに弱いこと等問題点も浮き彫りになった。また、バンドレスと言われてもなかなか踏み切れなかったのが当時でありました。
その後メーカーの懸命の技術努力とメタロセンの導入等により格段に品質が向上し、長期展張、広幅対応と農ビの使用後処理の問題等があって全国のハウス被覆は全面的にPOフィルムとなってきました。
圧倒的に多いパイプハウスの夏期の灼熱の高温に耐える特性が施設園芸農家の支持を得たものと思います。
ハウス内の藤田さんハウス内の藤田さん我が家は、7千㎡の施設がありますが、大型ハウスを含め今や全棟がPOフィルムとなっています。
少し栽培のことに触れたいと思いますが、施設野菜は今や日本の野菜生産の中で不動の地位を築いてきましたが、施設は風雨を防ぎ、夏は遮光資材の活用、防虫ネットを張り巡らすことにより安定的に安全な野菜を供給出来るようになりました。
しかしながら栽培理念、作物の生理は不変であり、施設栽培といえどもそれを忘れては成り立ちません。

三河の老農小柳津勝五郎翁の言葉に「人の智は自然の理には及ばねど理を助くるを人の智と知れ」というのがありますが、施設栽培は人の「智」そのものであり、限られた施設の土を大切にし、自然界の植物の生育相を注意深く観察し作物の生育を手助けするつもりで接していけば今後も高品質の健康野菜を消費者の皆さんに供給していけることと信じています。
メーカーさんは、今後より以上の品質アップ、流滴性と透明度の長期維持向上に一層の努力をお願いします。特にUV分野(紫外線カット)の技術発展、カーテン分野のPO活用を心から待ち望んでいます。
藤田慎一さんは、全国野菜園芸技術研究会常任理事として活躍されています。藤田園芸の野菜というパンフレットの中で、「土はいのちを生み出す母であり、健康な土が健康な作物を育て健康な人問をつくるとし、健康に育った野莱は薬莱であり、安全安心を責任もってお届けします。」とあり、すばらしい考え方で農業を営まれています。

がんばる!クリンテート家族
クリンテートDXで花づくり島根県頓原町(JA雲南)
景山 林造 さん

JA雲南の頓原地区は、出雲大社・宍道湖で有名な島根県の東部地区に位置し、中国山地連峰大万木山と三瓶山に囲まれた盆地であり、平均標高410mの高原地帯です。その環境の中でいち早く施設園芸に取り組まれている「つがか農園」の代表取締役景山林造さんを訪問し、クリンテートについてのご意見をお伺いしました。
景山さんは、20年前から標高の高い気侯を利用した夏場のほうれん草づくりを始められ、現在ではストックやトルコギキョウやアルストメリアなどを栽培されています。
花づくりのハウス前で研修生が記念撮影花づくりのハウス前で研修生が記念撮影最初のころは、農ビを利用されていましたが、春一番や台風などの風害にいつも悩まされていましたので、10年前から耐風性の良い農POに切り替えられたとのことです。
いろんな農POを使用されたとのことであるが、数年前JA全農しまねの担当者からクリンテートを薦められ、現在ではマーキュリーやクリンテートDXを展張されています。
軽くて、風に強く、大仕事の張替えが少なくなる塗布型は、長期展張ができるので生産者にとってメリットがある。また、新製品クリンテートEXを紹介したところ、厚みの0.13mmで0.15mmの耐久性があるのは、なお良いとのことでした。

クリンテートの品質向上に今後も取り組んでくださいと要望されました。
景山さんは、自らの施設園芸に取り組まれながら、農業従事者の育成にも力をいれられており、今でも県外から5名の研修生を受け入れられており、時には厳しい親父であり、時にはよき理解者であるという先進的な農業経営者です。(島根担当武末記)

がんばる!クリンテート家族
クリンテートDXでイチゴづくり千葉県館山市(JA安房)
小形 洋一 さん

ここ南房総の館山市ではイチゴの栽培が盛んです。観光農園としてのハウスも多く在ります。私はイチゴ狩りは行っていませんがイチゴの栽培ハウスを約2反6畝(800㎡)程所有しています。 これまで各社の農POフィルムを使用しましたがクリンテートDXが発売されてからは、クリンテートDXを使っています。
ハウス入口での小形さんハウス入口での小形さんイチゴの栽培には農ビが主に使われていました。しかし毎年張り替える為に農ビの展張作業に苦労していました。これに対して農POのバンドレスハウスにするとその作業は大きく軽減され農POが急速に広まりました。
汎用品から防霧タイプの農POへと使用する性能は向上していきましたが、農POフィルムはイオウ薫煙に非常に弱く苦労していました。イチゴの栽培にはイオウ薫煙が欠かせまんせので、クリンテートDXが発売された時の説明でイオウ薫煙にも強いと聞き、使用し始めました。

実際に使ってみると秋に展張し11月~翌年の3月頃までの間イオウ薫煙し、真夏の太陽熱による土壌消毒まで使用しますがそれまでの農POは太陽熱消毒までは持たなかったのですがクリンテートDXは十分に持ちました。また現在太陽熱消毒後に破棄処理する時に感じていますが他社のPOより柔らかく処理作業も大変楽です。
現在のイチゴハウスは毎年張り替えていますが、今後は長期展張の要望も増えてくると思います。イオウ薫煙をしても長期展張に耐える被覆材の開発に期待します。
小形さんは、三笠宮家への献上イチゴの選定に携わっていらっしゃいます。小形さんを訪問した日が、急邊三笠宮家献上のイチゴ選定のために管内のハウス巡回する日となりました。クリンテートを使っての感想や要望については部会の集まりのときにみんなにも聴いて頂く事をお願いしました。小形さんのイチゴは無事献上されました。(千葉担当西田記)

クリンちゃんの豆知識
気候温暖化
気候温暖化は、大気中の二酸化炭素が増えたことが原因です。二酸化炭素には熱を吸収する作用があります。二酸化炭素が増えると、宇宙空間へ逃げていくはずの放射熱が大気中に蓄熱されてしまうため、気温が上がってしまうのです。
なぜ二酸化炭素が増えたのでしょう?

それは、人間が生活の中で石油や石炭、天然ガスといった化石燃料を大量に燃やすようになったからです。
気候温暖化日本は、21世紀の終わり頃には年平均3°C高くなると予想されています。これは、緯度が6度も南にずれて、例えば北海道が東北の気候に変わるようなものです。
そうすると、これまで栽培してきた品種が作れなくなったり、新しい病気や虫が発生するなど、さまざまな障害の発生が予想されます。
これからの二酸化炭素の増加を抑えるためにも、暖房燃料や廃プラ量を減らす工夫が大切ですね。
(参考文献:小島覚著「よくわかる環境の話」)

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