NO.24秋季号 2005年9月1日発行

アスパラガス栽培における紫外線除去フィルムの資材特性長崎県総合農林試験場 作物園芸部 野菜科
研究員 井上 勝広

6月号では、アスパラガス半促成栽培における紫外線除去フィルム(以下「UVC」)の害虫抑制効果と収量への影響について試験結果を報告しました。今号では、UVCの資材特性について説明します。

2.紫外線除去フィルムの影響(6月号のつづき)オゾン層に吸収6)太陽光線のうち波長が400~700nmは可視光線であり、それより波長が短い100~400nmを紫外線といい、そのうち190~400nmを近紫外線といいます。近紫外線の190~280nm(UV-C)はオゾン層により吸収され、地表には到達せず、280~400nm(UV-AとUV-B)が地表面に到達します。

ところでUVCには,製品により紫外線除去率に差があり、ポリオレフィンフィルム(以下「農PO」)は280nm付近を若干透過させるのに対し、ビニル(以下「農ビ」)は完全に除去します。

しかし、190~280nm(UV-C)はオゾン層に吸収され、地表には到達しないので、実用上は問題ありません(図1)。

除去率の低下7)UVCは通常の展張期間である2年間被覆しても、紫外線除去率は低下せず、防除効果にも変化は認められません。

しかし、3年目では波長280~300nm、370~390nm付近に若干の除去率の低下が認められました(図2)。

以上の結果から、アスパラガス半促成長期どり栽培における紫外線除去フィルムの利用は、アザミウマ類に対し侵入抑制効果を示し、立茎開始後の急増期も遅くなります。また通常の展張期間である2年間はその効果が低下しません。さらに紫外線除去フィルムの利用はハウス内の紫外線量を大幅に減少させますが、気温や照度に変化はなく、若茎の収量、規格、緑色度、糖度も低下しません。

3.活用面・留意点・普及状況1)適用範囲はアスパラガスの半促成長期どり栽培地域です。
2)UVCはアザミウマ類のハウス外からの飛来・侵入を防ぐことで効果を発揮します。ハウス内での増殖は抑制しないと考えられるので、慣行フィルムと同様に防除適期を逸しないよう注意しましょう。
3)巻き上げの際,農ビの場合はベタつきやすいので、割布を入れる必要があります。
4)長崎県のアスパラガス栽培(140ha、1000戸、24億円)におけるUVCの普及率は、2002年には0%でしたが、長崎県野菜技術者の推進により、2003年には面積で4.6%、戸数で7.1%、2004年には面積で10.1%、戸数で13.2%と増加しました。今後も張り替え時にはUVCを選択する生産者が増えるでしょう。

がんばる!クリンテート家族
クリンテートで秀品率アップ スプレー菊づくり20年群馬県吾妻町(JAあがつま)
荒木 順一 さん

吾妻町は、群馬県の北西部、吾妻郡のほぼ中央に位置し、面積約220平方キロメートルの周囲には1000メートル級の峰々と、吾妻渓谷を有する吾妻川などをはじめ、多くの渓流にも見られるように、吾妻町は水と緑に恵まれた自然の豊かな町です。
吾妻町でスプレー菊の生産者である荒木さんを訪ね、お話しを伺いました。
20年前からスプレー菊を作り始め、作付面積は約4000平方m、ハウスは鉄骨ハウスが5連棟、2連棟を2棟、パイプハウスを6棟所有しています。最初の10年は農ビを使用していましたが、雹(ひょう)の被害でビニールが破れPOフィルムに張り替えたところ、傷で穴が開いても広がらずそれ以来PO系フィルムを使用し、現在パイプハウスにはクリンテートDXを使用しています。
荒木 順一 さん鉄骨ハウスにも防塵ビニールの0.13を使っていたところ、透明性が悪く秀品率が下がり、4年前にクリンテートMCに張替えました。
当初、紫外線の透過率を心配しましたが問題は無く、透明性は良かったとのことで収量アップに繋がりました。今では全てのハウスにスプリング止めを採用しマイカー線を使わなくなったことで、展張時の手間が随分省け作業が軽減されたと喜んでおられました。
お使いいただいているクリンテートMCも展張4年を経過し、この9月の張替えには業界初の新プラストマーを配合させ、透明性と強度をアップさせたクリンテート エクストラ(EX)をおすすめさせていただきましたところ、早速ご注文をいただきました。
荒木さんをはじめ部会の皆さんが心をこめて生産したスプレー菊は東京、神奈川を中心に関東一円に出荷されています。
荒木さんは、花き部会太田地区スプレー菊の部会長をされ、明るく気さくなリーダーとして積極的に活動されています。平成14年 第50回群馬県花品評会では個人の部で農林水産大臣賞を受賞されたスプレー菊づくりの名人です。(群馬県営業担当 鈴木)

クリンちゃんの豆知識

今回は企業と環境についてです。環境報告書
最近、環境に対する企業の関心が高まっています。いまや企業にとって環境は避けて通れない課題です。大手企業の8割が、自社の環境への取組みを外部に報告する「環境報告書」を発行しています。
これまで産業界は、もっぱら製品を生産することだけに専念し、その後の処理に対しては無関心でした。人間は、本来自然界にはないさまざまな化学物質、たとえばプラスチックや化学肥料、農薬、化学薬品などを人工的に作り出し、利用してきました。ところがこれら合成化学物質は、捨てられたとき、本来の自然機構では処理できないため、深刻な環境汚染を引き起こすことが明らかになり、利用するだけでなく、廃棄物の処理も重要ととらえられるようになってきたのです。
ある製品が、生産から廃棄されるまでにどれほど環境に負荷をかけるかを数値化するライフサイクルアセスメント(LCA)という考え方が広まっています。いかに環境への負荷が少ない製品を作り出すかが、企業の新たな課題です。たとえどんなに便利で高機能な製品でも、使用中や廃棄時に多くのエネルギーを消費して二酸化炭素をたくさん排出するようでは、これからの環境を考える世の中には受け入れられない、ということです。
農業においても、生産から廃棄まで、安全で環境負荷の少ない資材を選ぶことが大切ですね。(参考文献:小島 覚著「よくわかる環境の話」)

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