NO.26春季号 2006年3月1日発行

クリンテートを使って全農スプレイ菊栽培を全農営農・技術センター
嘱託 並河 治

例年になく寒い冬になりました。40年近く付き合いのあるキクの生産者が言いました。「ナミさん(私のこと)、こんなひどい年はひさしぶりだよ。去年までに比べると油代が2倍かかっている。花の価格はまあまあだったが、油代の負担の方がでけいやなぁ。」

寒さと石油高騰のダブルパンチが、花の生産者に暗い影を落としています。雪国の農家からは、ハウスが雪の重みで潰れたという便りも来ています。来年の冬も今年のように寒いかどうかは神ならぬ身の知る由もありませんが、石油価格が安くなるという保証は全くありません。生産者の皆様のチエと努力で、輸入に負けない、消費者の好みを先取りした品種を選び、品質の良い花を作ることが大切ではないでしょうか。

全農のスプレイギク

全農の品種展示全農の品種展示 日本の切花の多くの種類の生産が横ばい、または少し右肩下がりの傾向の中で、スプレイギクだけは20年以上毎年生産量が増えています。こんな花は他にありません。花の美しさはもちろんですが、使い勝手が良いためでしょう。花持ちはそこそこ良く、花色、花型は多様ですし、アレンジメント、慶事や弔事、家庭のテーブル花から仏花など、どんな用途にも使えます。 こんな点に目をつけて、全農営農・技術センターでは15年ほど前からスプレイギクの品種作りに取り掛かりました。担当者の努力によって、この数年ようやく生産者に認知されるような品種を発表できるようになりました。生産地で評判が上がると、10年以上前に出した、忘れられたような品種が日の目を見たりもします。

キクの品種というのは難しいもので、いくら花が良かったり、ある季節にはよく咲いても、他の季節には咲かないものもあります。 今のところ、全農の品種はお盆や秋の彼岸向けの夏秋ギクに人気があるようです。営農技術センターだけで選ぶのではなく全国の産地の生産者と一緒になって良し悪しを決めていくという、生産者とうまく協力できたことが、認知されるようになった原動力かもしれません。是非クリンテートを使った全農のスプレイギク栽培をおすすめいたします。

スプレイギク栽培と光、温度

プレリュードプレリュード スプレイギクの生産にとって、どのくらいの光の強さが最も適しているかということを一言で述べることはできません。夏に咲かせる夏秋ギクと、秋から春にかけて出荷される秋ギクは、光に対する反応が違います。また品種によっても違います。私のカンでは、最も光合成が盛んになるのは夏秋ギクでは45,000ルクス、秋ギクは35,000ルクスくらいだと思います。 太平洋沿岸地帯で、真夏の晴天日の照度は10万ルクス以上です。朝夕はもっと低いし、くもりの日はその半分以下でしょう。冬は晴れていても20,000ルクス程度です。このことから、10月から4月末までは、スプレイギク栽培にはハウス内にできる限り光を取り込むのが大切だということがわかります。

フィルムが光をよく通すとともに、汚れが付きにくく、しかもハウス内の水蒸気がフィルムに触れてできる水滴が流れ落ちやすいことが、スプレイギクを喜ばすことになります。石油高のことを考えると、保温効果も良い「クリンテートDX」は以上の条件をクリアする特性を備えていると考えられます。

ガラス温室などより骨材が少なく、影ができない利点もあります。かつて私がカーネーションなどでおすすめした紫外線カットフィルム、グローマスターはどうでしょうか。花色が白や黄色の品種を栽培する場合は良いのですが、桃色や紫紅色の人気品種には疑問があります。グローマスターをさまざまな花色の品種にテストをする必要があるという提案をしておきます。

スプレイギクの生産者が頭を痛めていることのひとつに、高温対策があります。秋ギクは30℃以上の高温ではまともに咲きません。また夏秋ギクも品種によっては開花が遅れたり、品種固有の色が出なかったりします。秋から春にかけてのクリンテートDXの利点が、かえってマイナスになり兼ねません。

光がよく入り、夏は高温になりやすいからです。そのためにサイドを高くし、開放部分を大きくすることが大切です。

夏を涼しく過ごす、さまざまな構造上の工夫が行われてきましたが、地球温暖化の進行する中で、冬に暖かく夏に涼しいハウス構造の開発がさし迫っていると思います。頭をやわらかくすることも大切です。冬の保温を兼ねた遮光カーテンの設置は明らかに有効ですし、夏用のハウスと秋から春用のハウスを別建てとしたり、ハウスとハウスの間を広くしたり...。なにせスプレイギクの将来性は、まだまだあるのですから。

がんばる!クリンテート家族
イチゴ作り"28年"愛知県宝飯郡一宮町 (JAひまわり 東部事業所管内)
鈴木 敏之 さん・秀子 さん

鈴木さんご夫妻鈴木さんご夫妻今回ご紹介させていただきますのは、一宮町でイチゴを栽培されている鈴木さんご夫婦を訪ね、お話を伺いました。
鈴木さんも以前はトマト・メロンの栽培農家として頑張ってこられたそうですが、オイルショックを境に農協からの強い勧めもあって、昭和52年からイチゴ栽培農家へと転身されたそうです。
現在の作付面積は
6m×3R×48m 1棟
7m×2R×47m 1棟
5.4m×2R×42m 3棟
合計2883㎡を所有されており、基本的にはご夫婦2人で頑張っておられます。

さて、ご本人曰くクリンテートとの出会いは平成になって間もない頃だそうで、当時ビニールしか知らなかった鈴木さんは、愛知経済連 I課長の強い勧めによって、恐る恐るクリンテートを使用したそうですが、ビニールにはない強さ、丈夫さに強く魅力を感じられたそうです。
以来、クリンテートとの付き合いも約15年 となり、とりあえず今年もクリンテートDXをご注文いただきました。
また鈴木さんは、今年より6mハウスと7mハウスの2棟にJA愛知経済連の"ゆりかご高設栽培システム"を導入され、66歳になってなお充実した日々を送られております。
この分では当分クリンテートも安泰と少々安心している担当の森口です。
それでは鈴木さん、これからもお体には十分気をつけられて、ご夫婦仲良く頑張ってくださいね。応援しております。 

がんばる!クリンテート家族
三石町の農業の現状と農業実験センターの役割三石町農政課 課長 酒井 哲也 さん
三石町農業実験センター センター長補佐 城地 哲也 さん

~紫外線カットフィルムで良質なグリーンアスパラガス栽培を目指す~
三石町の農業の現状育苗ハウスのようす育苗ハウスのようす三石町は、北海道の南東部、日高管内の中央に位置し、南は雄大な太平洋に面し、北は秀峰日高山脈を望む、緑豊かな自然環境に恵まれています。気候は、沿岸地域の海洋性の気候と内陸地域の大陸性気候によって、年間を通じて比較的温暖であります。
農業の主な作目は、耕種が稲作、花卉及び野菜、畜種は軽種馬、肉用牛、酪農であります。特に花卉については、平成6年度から作付けの増加したデルフィニウムが大産地に成長し、現在では札幌、関東、関西を中心に「みついし花だより」として日高東部広域出荷され、その認知度を高めています。

また、平成15年度から本格的な作付けの始まったグリーンアスパラガスも作付け農家戸数が増えてきており、デルフィニウムに続く三石町農業の柱として将来が期待されています。
これらを栽培するビニールハウスなどの農業施設も増加の一途を辿っています。三石町では、その作業性の良さから、歴史的に農POの導入が早かったこともあり、急速に農PO化が進んでいます。今後の施設整備にあたっても、北海道の補助制度の活用や、三石町とJAでの支援策などにより、産地の形成に向けて取り組んでいくこととしています。
農業実験センターの役割三石町農業実験センター三石町農業実験センター当センターは、花卉・野菜の研究を目的として平成元年に開設いたしました。開設当時の実験センターは、5棟のハウスで花卉・イチゴ・キュウリ・ミニトマトなどを試験栽培していました。当時は施設規模が小さかったことから実証結果を出すまでに至らず、平成4~6年度に施設拡充を図ることとなり、現在の施設規模となりました。
センターの事業として最もウェイトが高いのは、農家指導と試験・実証、育苗管理であります。その試験・実証した生産物は、JAを通じて市場出荷しており、このことが市場動向を把握するうえで大きく、翌年の農家作型指導に大変役立っています。

花卉の育苗は、生産者が種子・用土・トレイを持ち込み、センターの播種機や土詰機を用いて行い、以後はセンター職員が管理し、定植時期にそれぞれ生産者が取りに来ます。この育苗ハウスができる前は個々のハウスで育苗していましたが、苗の品質向上や育苗ハウスが生産ハウスに変わったため、切花の品質及び出荷量は飛躍的に伸びました。
また、センターの目的は、「農家所得の確保」にあるため、市場性を重視(切花は流行もので品種の入れ替わりが早い)した試験として、品種特性の把握、品質、収量性、作型研究に絞り、かつ有望品種の実証・作型試験を行っています。 アスパラガスについても品種別に耐冷性、収量、病害について試験を実施しています。昨年については、紫外線カットフィルムの使用によるアントシアニン色素発色抑制効果(地際の赤みを抑える効果)について試験を行い、その効果について確認をいたしました。当事例については、農家所得の向上に繋がるものと期待されています。
今後も、「農家所得の確保」を基本に据え、町及びJAが相互に役割を果たし、農業改良普及センターと連携して取り進めてまいりたいと考えています。
文中にあるとおり、昨年、当センターにおいてクリンテートグローマスターの実用試験を行っていただきました。快くお引き受けいただいたこと、心より感謝いたしております。今後とも、新技術・新資材などのご意見をいただきたく、宜しくお願いいたします。(北海道営業所 川越)

クリンちゃんの豆知識

「IPM」という言葉を知っていますか?Integrated Pest Managementの略で、日本語に訳すと「総合的(病)害虫管理」ですが、「IPM 」として既に定着しつつあります。クリーン農業をめざす方は早くからこの考え方を取り入れて実践しています。
病害虫解説文によると、「病害虫の発生状況をよく把握し、経済的に 被害が出るまでの許容範囲(要防除水準)を作物、地域ごとに明らかにして生産圃場での発生予察を各種の防除技術を組み合わせ、要防除水準以下に病害虫の密度をコントロールする防除方法」となっています。つまり、環境のため、過剰な農薬散布をやめて、さまざまな方法を組合わせることによって病害虫を防除しよう、ということです。
防除方法としては、物理的管理・耕種的管理・生物的管理・化学的管理(農薬)があります。物理的管理には紫外線カットフィルムや防虫ネットを使う方法があります。三善加工にも紫外線カットフィルム「クリンテートGM(グローマスター)」がありますね。耕種的管理は土壌や気象環境をコントロールする方法です。生物的管理というのは天敵や微生物を使う方法です。これらの方法を組合わせることで農薬の使用を必要最小限にできるのです。
化学系農薬をまったく使わない無農薬栽培というのは、生産者の方への負担が大きくて、続けるのが大変という声も聞きます。このIPMの考え方を消費者にも理解してもらうことによって、細やかな技術を生かした日本の農業が生きてくると思います。

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