NO.39冬季号 2008年6月1日発行

夏秋イチゴ東北農業研究センター 夏秋どりイチゴ研究チーム
森下昌三

「農研機構」の紹介パンフレットの東北農業研究センターの所で「夏秋どりイチゴの生産技術~短日処理のみで9~11月どり」が研究紹介されていました。今後、イチゴの端境期の夏秋期のイチゴ生産技術が注目されますので、越年苗を利用した夏どり(7、8月)栽培や温度・日長条件に係わらず、花芽分化して夏秋どりができる四季成り性品種「なつあかり」「デコルージュ」を開発された東北農業研究センターの森下先生に原稿をお願いしました。

我が国のイチゴは冬春イチゴと夏秋イチゴに大きく分けることができます。冬春イチゴはハウスイチゴとも呼ばれ、11月から翌春の5月頃まで保温あるいは加温された施設内で生産されるイチゴを指します。我が国で生産されるイチゴの大部分がこの冬春イチゴです。

一方、夏秋イチゴは冬春イチゴの出荷が終わる6月頃から出荷を始め、冬春イチゴの出荷が始まる11月頃に出荷を終える、いわゆる冬春イチゴの出荷の端境期を埋めるものとして1990年代に登場したイチゴ栽培です。イチゴは高温に弱く、我が国では夏秋期の生産が難しいため1900年代後半まではほぼ全量を海外から輸入していました。その量は年間およそ5,000t。おもにアメリカから輸入して、洋菓子メーカー等に供給されていました。

平成18年度夏秋どりイチゴの作付面積(栃木県調べ)平成18年度夏秋どりイチゴの作付面積(栃木県調べ) 夏秋イチゴの価格は冬春イチゴの2~3倍と高いことから生産者の関心は高く、たびたび国内でも栽培が試みられましたが、収量が安定せず定着しませんでした。 1990年代に「ペチカ」等の優良品種の育成と販売流通システムの確立によって寒地・寒冷地を中心に徐々に普及しました。夏秋イチゴの作付面積はおよそ80ha(2008年)あり、そのおよそ半分を北海道、残りの半分を東北、長野、徳島等が占めています。 生産量は農林統計調査がないために正確な数値は不明ですが、作付面積から1,500t程度と推計されます。完全自給には一層の面積拡大が必要であることから農家や自治体の関心は高く、試験研究機関には作柄の安定に向けた技術開発が求められています。

高設での栽培高設での栽培 イチゴの生育適温は15~20℃ですが、これを超えると果実が小玉化したり、軟らかくなります。また酸含量が高くなって食味が低下します。 夏秋イチゴ栽培は暑さとの戦いでもあり、産地が北海道、東北や高冷地に集中しているのはこのためです。夏秋イチゴの生産安定とさらなる面積拡大には遮熱対策が不可欠であり、効果的で安価な遮熱資材の開発が期待されています。

がんばる!クリンテート家族
『クリンテートエクストラ』で施設菊を栽培静岡県 湖西市(JAとぴあ浜松)
松井 良裕 さん

静岡県の西の端、湖西市は古くは東海道の宿場町として発展し、現在は自動車関連を中心とした県内有数の工業の町であり、また花卉、野菜、果樹栽培も盛んな園芸地域です。
今回はこの湖西市(JAとぴあ浜松)で施設菊栽培をされている松井良裕さんを紹介します。
立派に栽培した菊に笑顔の松井さん立派に栽培した菊に笑顔の松井さん施設菊は一般的に〝電照菊〟と言った方が分かりやすいかも知れません。
電照菊とは、菊は日照時間が短くなると花芽を形成し、やがて蕾となり開花する事から、花芽を形成する前に人工的に光を当てて開花時期を遅らせる抑制栽培方法です。松井さんは、JAとぴあ浜松施設菊協議会に所属、周年栽培で年約2.5作栽培し、奥さんと息子さん、それから数名のパートさんと共に忙しい毎日を送っておられます。

10年程前にそれまでの農ビに代わり他社の農POを使用されておりましたが、5年前から一部のハウスにクリンテートを展張し、昨年、張替え時期が来た事とJAの奨めもあり所有される4ヶ所の屋根型連棟ハウス約50aすべてを厚み0.13㎜の『クリンテート エクストラ』に張替えられました。
実際に張替えをされた息子さんは、それまでの厚み0.15㎜より軽い為、比較的楽に作業ができたそうです。勿論、薄くなってもフィルム強度や保温性は充分確保されていますので安心してご使用いただいております。
松井さんの施設菊は冠婚葬祭の業務用として、JAとぴあ浜松花卉営農センターを通じて、主に京浜方面を中心に、大阪や遠くは北海道、東北方面へも出荷されているそうです。
松井さん、これからもクリンテートをよろしくお願いいたします。また、益々のご活躍を祈念しております。(静岡県営業担当 鈴木記)
 

がんばる!クリンテート家族
クリンテートデラックスでのあまおう栽培福岡県久留米市城島町(JA福岡大城)
原 秀清 さん

JA福岡大城は九州随一の大河筑後川流域で筑後平野の南側に位置し、今では全国的なブランドとなった「あまおう」の一大生産地です。
そこで、約40年いちご栽培一筋に努力して来られたのが、今回ご紹介するいちご部会長の原 秀清さんです。原さんがいちご栽培をスタートさせた約40年前は、今の様な園芸用パイプハウスは無く、また、有っても高価だった為、鉄パイプと竹を交互に使いコストダウンを図りながらのスタートだったそうです。また、今のような加温機は無かった上、夜間の保温を重視する作物の為、ハウス内に竹でトンネルをする2重被覆が主流だったそうです。
現在は、約50mの3連棟ハウスを2箇所と単棟ハウス2箇所の計約2,400㎡で「あまおう」栽培に尽力中です。
今までは、ハウスフィルムには農ビのみを使用されて来られましたが、JA福岡大城城島生活資材館の野口店長のすすめで、今期初めて、「クリンテートデラックス」を試験的に導入いただきました。

導入の動機は、農ビと違い、展張後に傷等が入った場合、「クリンテートは、裂け難い」という事と、フィルムの保温性は農ビと同等で「軽い」というのが導入の動機だったそうです。
あまおう収穫中の原さんあまおう収穫中の原さん実際に使用されての感想は、まず、いちごの出来具合に関しては、農ビと同等で色つき等も問題ない事と、今年の春一番の突風時に、農ビは裂けないかが心配だったが、「クリンテート」は外気による伸縮が少ない分、多少バタついたが、裂ける心配が無かったと言われておりました。
さらに、農ビと比較して軽量な為、展張・今期栽培終了後のフィルム除去作業時の労力軽減になると期待されております。今後は、コスト・作業性の面で有利なクリンテートが広がるのではとの嬉しい声も聞かれました。原様には、今後の「あまおう」栽培による福岡施設園芸の一翼を担って行かれると共に、原様の農業経営が益々ご発展して行かれるようご祈念申し上げます。(福岡県営業担当 谷川記)

クリンちゃんの豆知識

チベット高原チベット高原植物の根は、通常は人の目に触れないため忘れられがちですが、養分や水を吸収したり、植物体を支える以外にも、とても重要な役割をもっています。
地球温暖化の対策として炭酸ガス濃度を減らすための取り組みがいろいろありますが、そのひとつとして積極的に植物を植えることも行われています。植物は体を作るための原材料として炭酸ガスを吸収するからです。
このとき、植物として着目されているのは森林を形成する樹木です。地上部分が大きくなるため、生長する際にたくさんの炭酸ガスを吸収させることができるからです。

しかし、実は小さな草で形成される草原も、森林に匹敵する炭酸ガスを蓄積しているという報告があります。樹木の地上部と地下部(根)の比率は、5:1ですが、草の場合は逆に1:5と考えられています。草の根や地下茎は樹木よりも発達しており、吸収した炭酸ガスの多くがこの地下部に蓄えられます。
表 森林・草原などの面積と炭素蓄積量表 森林・草原などの面積と炭素蓄積量
Land Use, Land-use Change, and Forestry,
a special report of the Intergovernmental Panel on Climate Change(2000), P4.より

大きな樹木が育てられない寒冷地・乾燥地の草原を保全し、砂漠化したところを再び草原に戻すことは、炭酸ガス濃度の上昇を抑えるためにも重要と考えられます。
引用:独立行政法人 国立環境研究所ニュース21巻6号「陸域の炭素収支における草原の役割」

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