NO.41春季号 2009年12月1日発行

秋田県オリジナル野菜品種の開発と普及状況(その2)秋田県農林水産技術センター農業試験場
野菜・花き部 主任研究員 椿 信一

はじめに前回(No.38 春季号)は、秋田県で育成した野菜品種の概要及びその中からアールス系メロンについて紹介しました。今号ではひき続き大玉スイカについて紹介します。

大玉スイカ「あきた夏丸」

今年も立派な大玉で収穫できました今年も立派な大玉で収穫できました 秋田県は夏季比較的冷涼であるため、山形県や長野県とともに盛夏期におけるスイカ主要産地の一つとなっています。しかし、立地面での有利性を活かしているものの、品種については大手種苗メーカー育成種を採用しており、本県ならではの独自性を発揮できずにいました。 近年、スイカの消費量は減少傾向にあり、他県との産地間競争は年々激化しています。そのような状況の中で、地域で生まれ、その地域に最適な品種を用いて独自性をアピールしていくことは、重要な戦略の一つと考えられることから育種を進めました。 「あきた夏丸」は、基となった市販F1品種の後代を、本県の気象条件下で長年選抜を繰り返すことによって育成したF1品種です(平成19年3月に品種登録)。本品種は長い間民間育成品種に独占されていた大玉系スイカの中で、約半世紀ぶりに公的機関の手で育成された大玉スイカです。

新品種として発表後の本県での栽培面積は年々増加し、初年の平成16年に約3haだった栽培面積が、平成21年には「JAおものがわ」を中心として約90haになり、本県を代表する品種に育ってきています。

店頭に並んだ「あきた夏丸」店頭に並んだ「あきた夏丸」 「あきた夏丸」の主な特長は次の通りです。
1.着果は安定しており、生育旺盛で収量が多く、裂果や変形果の発生も少なく、作りやすい
2.果皮色は濃緑、縞模様が太く鮮明で玉揃いが優れているため、店頭で見栄えがする
3.糖度が高く、果肉は鮮明な濃赤色、空洞やうるみが発生せず、カット販売にも適している
4.果肉は、近年の好みを反映して硬めで歯ごたえがあり、シャリ感が強く食味が優れている
「あきた夏丸」の販売にあたっては、品種名を全面に掲げることを目標としています。当初、スイカの品種売りは、その違いがわかりにくく不可能と考えられていましたが、県内では食味の良い「あきた夏丸」の知名度が高まるにつれ、他品種より高単価で取引されるようになりました。 ただ、まだ知名度が低い県外出荷分については、依然として一般的な大玉スイカとしての販売にとどまっています。今後、県外でも品種名のPRを継続することはもちろんですが、外観だけで一目で秋田県産とわかる「あきた夏丸」の姉妹品種育成にも取り組んでいます。

終わりに秋田県は夏野菜の栽培では夏期冷涼という優位性を備えているにもかかわらず、これまでは、市場やメーカー主導の産地リレーの中で、一産地として利用されてきたにすぎません。しかし、本県産夏野菜の飛躍には、生産者の側から主体的に、全国の消費者向けて売り込む必要があると思われます。そのために、「あきた夏丸」をはじめとした県オリジナル品種が活用されることを期待します。

がんばる!クリンテート家族
クリンテートエクストラで「もういっこ」宮城県栗原市(JA栗っこ)
三浦 孝夫さん

仙台市から国道4号線を約70kmほど北へ走ると、迫ってくる険しい奥羽連峰の中に、1,627mの高さを誇り日本200名山に選ばれる美しい栗駒山が見えてきます。
2005年に近隣の10町村が合併して、宮城県内でもっとも広い約800平方キロmという面積を持つ栗東市は、米、野菜、果樹、花などの農産物の他にラムサール条約の登録地である伊豆沼、内沼に毎年秋から冬にかけて何万羽という真雁や白鳥が飛来することで有名です。
今回はこの栗東市で、イチゴを栽培して23年以上になる三浦孝夫御夫妻をご紹介します。
1985年頃、それまでのサラリーマン生活から一転して農業への転進を決意した三浦さんは、パイプハウス3棟(530平方m)からイチゴ栽培を始めました。
当時は、宮城県の北部でのイチゴの栽培は大変めずらしく、試行錯誤を繰り返しながらの大変なご苦労がありましたが、持ち前の研究心と情熱で次々と困難を乗り越え、ハウス面積も徐々に大きくして経営の安定を図ってきました。
そして、平成10年には1,400平方mの連棟型パイプハウスに高架栽培方式を採用して生産性を大きく向上させることに成功すると、さらに平成18年にも同じ仕様で1,400平方mの連棟型パイプハウスを増設するまでに至りました。
現在はこの2棟の大型連棟ハウスで、「とちおとめ」と宮城県産の新品種「もういっこ」を栽培して、JAへの出荷と店頭での直売を中心に販売をしており、シーズン後半にはイチゴ狩りのお客さんにハウスを開放しております。
三浦さんとクリンテートの関わりは、平成18年に代行店の(株)エドビ仙台工場の遠藤工場長(当時)の紹介により、クリンテートデラックスの流滴性能の試験展張のお願いに訪問したことからでした。
その後、新しく始められたさくらんぼの雨よけにクリンテートデラックスを採用していただき、また、イチゴのパイプハウスの張替えに展張したクリンテートエクストラは、その丈夫さと流滴性能に高い評価を得て、その後の張替えから順次に採用していただいております。
イチゴのほか、米、さくらんぼなどの栽培も手がけて、大変に忙しい毎日を送っておられる三浦さんご夫妻ですが、イチゴのオフシーズンには、キャンピングカーを走らせて全国を回ることが大きな楽しみであり気分転換になると言われます。
今年もイチゴの定植と、米の刈り入れも終わってやや一息と言う10月の1日に、クリンテート便りの取材をお願いして、明るい奥様に淹れて頂いた本格的なコーヒーをおいしく飲みながらの楽しい時間でした。
三浦さん、本日はありがとうございました。
今後ともクリンテートをよろしくお願いいたします。
(宮城県営業担当 鈴木正記)

クリンちゃんの豆知識

季節の変化と植物の関わりについてしっていますか?
季節の変化とは、日照時間や気温が変わることです。
日照時間の影響を受けやすいものを長日植物または短日植物といい、影響を受けにくいものを中日植物といいます。
長日植物とは、昼の時間が長くなってくる春の季節に花芽形成を行う植物で、短日植物とは、昼の時間が短くなってくる夏(夏至のあと)に花芽形成をする植物です。実はどちらも重要なのは夜(暗闇)の連続する長さであることがわかっています。
桜長日植物は春から夏にかけて一斉に花を咲かせる草花や野菜に多く、短日植物としては秋に咲く菊が代表的です。イチゴは短日植物であり、花芽形成のためにはさらに低温を必要とします。自然状態では秋頃に花芽形成するため、クリスマスケーキに間に合いません。そこで、まだ暑い時期に人工的な暗闇と低温環境を造って栽培し、早く花を咲かせて年内に収穫できるように操作しています。
一方、気温の影響としては、積算温度があります。イネのような赤道付近を原産地とする植物は日照時間には鈍感で、その代わり温度の影響を強く受けます。平均気温の高い地域で年に2回稲作ができるのは、積算温度が短期間で満たされて生育が早いからです。
身近なところでは、桜の開花も積算温度で決まります。桜前線が日本の南から次第に北上していくのは積算温度の条件を満たす時期がずれるためです。地球温暖化の影響もあって、桜の咲き始めは年々早まる傾向です。
日照時間や気温と植物の関わりを思いながら、四季折々の自然や野菜を楽しみ、味わってみてください。

がんばる!クリンテート家族
ホクレン包材(株)妹背牛第2工場を訪ねて北海道のクリンテート供給基地
妹背牛町工場ホクレン包材さんは、本社を札幌に構え、肥料・米麦・精米などの各種農業用包装資材を製造・加工・販売されている会社です。
北海道の妹背牛町(もせうしちょう)に3つの工場があります。妹背牛町は札幌から約95km、旭川から約45kmの美しい田園地帯に位置します。
ここ妹背牛工場から日本の総面積の約2割超を占めるといわれている北海道の隅々までクリンテートの大半は出荷されていきます。
ホクレン包材さんでは原反の保管から加工まで、道内の加工・物流に関わる仕事を一手に担っていただいています。例年は10月頃から注文が入り始め、農繁期直前の翌年2~3月にピークを迎え4月頃まで約7ヶ月間フル操業です。
妹背牛町工場2受注規格が農家のみなさんのハウス個々に合わせたオーダーメイドとなるため、どうしても人海戦術になりますし、いくら農ビよりも約3割軽いといっても100mを超える長い注文も多いため重量が100kgを超えるものもあります。また、最盛期には朝の注文分を当日の夕方に出荷するなど、大変ご苦労いただいています。
北海道でのクリンテートの普及の歴史を語るうえで、ホクレン包材さんのご努力、ご協力を抜きにはできません。
クリンテートの発売から20余年、当初は弊社の道内駐在もいないなかで、ホクレン包材さんの営業の皆様にお願いして全道各地で試験展張や普及に努めていただきました。現在も農家推進や日々の巡回に同行していただくなど拡販にご協力していただいています。
ホクレン包材様、今後ともよきパートナーとしてお付き合いくださいますようよろしくお願いいたします。(北海道営業所 後藤記)

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