NO.9冬季号 2001年12月1日発行

農POと作物づくり-農POクリンテートDX-全農営農総合対策部 生産資材研究室
技術主管 林 英明

1.はじめに

フィルム試験で栽培中のスイカフィルム試験で栽培中のスイカ 熊本県における野菜生産は1,094億円(平成11年度)と農業分野で最も生産が盛んな部門である。 野菜の中でも特に施設野菜の生産はメロン、スイカ、トマト、イチゴなど粗生産額の約70%を占めている。 その生産施設はビニル被覆栽培が中心で、47,210ha(平成11年度)であり、全国の13%である。さらに花き類及び果樹を加えたビニル被覆面積は約55,184haとなっている。 それに伴うビニル使用量は全国一であるが、それに伴い、廃棄ビニル量も熊本県が最も多い。

収穫直前のスイカ収穫直前のスイカ しかし、その廃棄ビニルの回収は熊本県廃棄プラスチック類処理対策協議会が中心となり、廃棄ビニルの回収率は90%と全国一の処理量となっている。その処理費用は15円/kgである。 使用ビニルは現在でも塩化ビニルが最も多く、塩化ビニルは仮に焼却しても塩素を含み、ダイオキシンが多く出やすいといった問題がある。 熊本県では処理が容易で、再生利用ができる資材への変換を促進しているが、平成7~8年度にかけて、熊本県の要請を受けて積極的に高保温性ポリオレフィンフィルムを開発されたのが住友化学株式会杜であり、塩化ビニル並の保温性を持つ最初の製品がクリンテートDXであった。

2.クリンテートDXの特徴表1従来、POフィルムは防塵性、耐風性、作業性、廃棄処理性に優れ、2,3年の展張が可能であるが、保温力がビニルに対し、低いのが大きな欠点であった。

この欠点を克服しつつ、従来のPOフィルムの長所を持っているのが高保温タイプのクリンテートDXである。(表1)

表2、図1熊本県農業研究センターにおいて、塩化ビニル(0.075mm)を対照に半促成栽培(播種1月10日、定植2月23日、収穫6月上旬)のスイカ(冨士光TR)で試験したが、その結果、保温性は最低温度はやや塩化ビニルより低かったが、日中フィルム試験で栽培中のスイカの温度の上昇が早く、最高温度はクリンテートDXが透過性がやや高いので、高い傾向が認められ、平均温度はクリンテートDXがやや高く推移していた。(表2、図1)

また、湿度はややクリンテートDXがやや低い傾向が見られた。

図2、表3光の透過性は展張後約3月目の5月の調査では塩化ビニルに対して、クリンテートDXの一重張りで9%、二重張りで5%透過性が高く防塵性が高いことを示していた。それに伴い、生育(つる長、葉数)、着果率及び平均果重はクリンテートDXがともに優れていた。(図2、表3)

このように、高温性野菜のスイカにおいてもビニル以上の成果を示し、十分低温期の栽培にもクリンテートDXは使用できることが証明された。

3.使用上の留意点クリンテートDXを使用する上での留意点としては、クリンテートDXは耐風性が高く、19mm径程度の単棟パイプハウスでは強風の時、フィルムが丈夫で破れにくいため、パイプの変形を招きやすく、そのためクリンテートDXの使用に当たっては、フレームの強度が高い構造のハウスに使用することが望ましい。

また2年以上の長期展張の場合、2年目からはフィルムヘ流滴剤の噴霧をしている人もいる。

4.今後のフィルムの方向ヨーロッパにおけるプラスチックフィルムはほとんどPO系フィルムであり、環境保全や廃棄ビニルの処理コストを考えると日本もPO系フィルムや硬質フィルムに向かうべきであり、単棟ハウス等ではフレームの強化と合わせて、耐侯性ハウスとしてPO系フィルムが普及することが期待される。

農POと作物づくり-農PO展張ハウスにおけるキュウリの栽培-全農営農総合対策部 生産資材研究室
技術主管 林 英明

農POは、年々使用量は増加していますが「農POのハウスでは良いキュウリができない」という話を、お聞きになったことはございませんか。
先日、農POのハウスで立派に生育しているキュウリを見学する機会がございましたので、今回は、その事例を中心に農POを展張したハウスにおけるキュウリ栽培について述べたいと思います。

1.高い空気湿度を好むキュウリと農POを展張したハウスの密閉度なぜ農POのハウスはキュウリ栽培に適さないという話が出るのでしょうか。それはキュウリの生育特性と農POの特徴の両方に原因があるようです。

ご承知にようにキュウリは生育適温が高く、空気湿度が高い状態で光合成が盛んに行われます。光合成に適した空気湿度は相対湿度80~90%といわれており、良好な生育をさせるために日中は高い空気湿度を保つ必要があります。

選定・箱詰めされたJA伊達みらいのキュウリ選定・箱詰めされたJA伊達みらいのキュウリ 一方、農POはべとつかないという性質があるので、ハウスに張った場合、フィルムの重ね合わせ部分などに隙間ができるのではないかと懸念されています。 すなわち、「農POハウスは、密閉度が低いのでハウス内の空気と外の空気が入れ替わりやすく、そのためハウス内の空気が乾いて、キュウリの生育が悪くなるのではないか」と推論されているようです。

2.JA伊達みらい・霊山きゅうり部会におけるキュウリ生産11月7目、福島県のJA伊達みらい・霊山営農センターを訪間して当地のキュウリ生産の状況をお聞きし、農家のキュウリ栽培ハウスを見学させていただきました。

霊山きゅうり部会は阿武隈山地の一角を占める霊山町・月舘町のキュウリ栽培農家256戸が参加する部会で、ハウス栽培及び雨よけ栽培で年間延べ1,435a、露地で2,109aのキュウリを栽培しています。

道●に●設を敷いてキュウリを栽培している農POのハウス道●に●設を敷いてキュウリを
栽培している農POのハウス
ハウス栽培と雨よけ栽培は両方とも天井・サイド・妻面にフィルムを張った単棟のパイプハウスを使用しています。 保温性の高いパイプハウスを使用して気温の低い春先から晩秋または初冬まで無加温で栽培するものをハウス栽培、比較的気温の高い時期に栽培する作型を雨よけ栽培と呼んでいます。キュウリは2月~7月に順次播種して、5月~12月に収穫・出荷します。

パイプハウスで使用されているフィルムは農POが60%、農ビ40%だそうです。ほとんどのハウスがサイドのフィルムを巻き上げて換気を行っていますが、農POは、べとつかないのでフィルムの巻き上げ・巻き戻しがスムーズに行え、それが農POの普及した最大の理由だそうです。ただ、農POについては、普及の初期段階で、一端広まった農POが保温性の不十分なことから一時使用量が減り、保温性の良いものが市販されるようになって再び増えた経過があるそうです。現在使用されている農POは外張り・内張りともに保温性の高い厚さ0.1mmのクリンテートDXです。

当地のキュウリ栽培についてはJAの指導に負うところが多いようですが、JAは農POのハウスと農ビのハウスで栽培・管理法について差を付けるような指導はしていないとのことです。

3.高湿度の農PO展張ハウスで育つキュウリ住化プラステック(株)・三善加工(株)製の農POクリンテートDXを外張りと内張りに使用した佐藤正徳さんのハウスを見学させて頂きました。パイプハウスは棟高4m・軒高2.2m・間口6.3mの比較的大きなハウスで、キュウリが4列に植えられていました。

ハウスに入って、まず感じたのは湿度が高く、気温も高いということでした。湿度が高いため写真機のレンズが曇って、なかなかハウス内部の写真が撮れない状態で、額に汗がにじんできました。

通路に放水パイプを敷設してキュウリを栽培しているガラス温室通路に放水パイプを敷設して
キュウリを栽培しているガラス温室
天気の良い日の午後2時頃にお伺いしたわけですが午前中に1時間ほど東西棟の北側のサイドを開いて換気し、正午に数分間潅水したそうです。 キュウリは60cm幅の畝に1条植えになっていましたが、緑色フィルムでマルチングをしてマルチフィルムの下にキュウリの株をはさむように2本の潅水チューブを敷設しています。通路は、フィルムによるマルチングはしないで、籾殻を10cmくらいの厚さに敷いています。靴で籾殻の層に窪みを作ると中の籾殻は湿っており、潅水した水が通路に流れ出した様子が伺えました

今年は夏の天候が不順だったのでキュウリの生育は例年より多少劣ると佐藤さんは話されましたが、キュウリは立派に生育していました。農POはサイド換気が容易で、キュウリ栽培で間題になることはないとのことでした。ただ、潅水と換気には気を付けているようです。ハウス内の湿度を保つためにかなり多めに潅水しているようですが、ハウス内の気温が十分に上昇してから潅水を行うようにし、地温が下がり過ぎないように注意しているとのことです。

4.まとめキュウリは農POを展張したハウスで十分栽培できると言っていいでしょう。たしかに、流滴性の良い農POハウスは空気が乾きやすい傾向があるようですが、加湿や換気の方法を工夫することによってキュウリの生育に適した環境を作り出すことが可能と思われます。

施設園芸に長く携わっておられる方にお伺いしたところ、ガラス温室でキュウリの栽培が始まったときも同じようなことがあったそうです。ガラス温室は乾燥するので、しばらくの間良いキュウリが作れなかったそうです。しかし、現在はガラス温室で立派なキュウリが生産されています。神奈川県の和田政行さんは、通路に加湿専用の散水パイプを設置したガラス温室で品質の良いキュウリを生産して、一昨年のJA全農主催の全国施設園芸共進会で全農会長賞を受賞しています。

この記事が農POハウスを用いたキュウリ栽培の参考になれば幸いです。

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