NO.38春季号 2009年3月1日発行

秋田県オリジナル野菜品種の開発と普及状況秋田県農林水産技術センター農業試験場
野菜・花き部 主任研究員 椿 信一

はじめに

表1 農業試験場育成の野菜品種表1 農業試験場育成の野菜品種 秋田県はこれまで稲作中心の農業生産構造が続いていましたが、米価低迷著しい昨今、収益性の高い野菜等を取り入れた複合経営を確立していくことが重要となってきました。 そこで、野菜の生産拡大と産地育成にはオリジナル品種育成が有効と考え、農業試験場をはじめ、地域振興局や全農が一体となって品種の開発と普及を押し進めています。 これまでに農業試験場で育成した野菜の品種は(表1)のとおりです。なお、県外出荷を意識して、水稲の全国的な銘柄「あきたこまち」にあやかり、品種名に「あきた」または「こまち」が使われているのが特徴です。本稿では、この中からアールス系メロンについて紹介します。

「秋田甘えんぼ」シリーズ比較的夏期冷涼な本県の気象を活かして7月から10月いっぱいに収穫するアールス系メロンは県外出荷に有利な作目です。しかし、市販品種を利用しても、食味で高級メロンであるマスクメロンに及ばないため、単価も安く栽培面積が伸びていません。そこでマスクメロン並の食味で、他産地と差別化できる本県独自品種の育成を図りました。

  • 秋田甘えんぼ
  • 秋田甘えんぼレッド

夏系の「秋田甘えんぼ」(緑肉)、「秋田甘えんぼレッド」(赤肉)は8月中旬~10月下旬の出荷用で、春系の「秋田甘えんぼ春系」(緑肉)、「秋田甘えんぼレッド春系」(赤肉)は7月上旬~8月上旬出荷用です。いずれの品種も、草勢が強く栽培容易、果実の大きさが適度で球形に近く、ネットは密に発生します。糖度が高く、果肉はとろけるようなメルティング質でマスクメロンに極めて近い食味が特徴的です。つる割病(レース0、レース2)に抵抗性で連作できます。

おわりに現在、「秋田甘えんぼ」をはじめとして、これら育成品種の種子供給は県内に限られています。今後も引き続き県内限定で本県の地位を確立していくのか、あるいは、県外にも生産を促すことで知名度を上げていくのかを検討しなければならない時期にきています。

がんばる!クリンテート家族
クリンテートでバジル等のハーブ類とホウレンソウの周年契約栽培東京都西東京市(JA東京あぐり)
新倉 庄次郎さん

JA全農東京で園芸資材を長年担当され、クリンテートの取り扱いでお世話になっています山口有里さんに「がんばるクリンテート家族」として、新倉庄次郎さんの営農や園芸資材の取扱等について、投稿いただきました。
新倉さん(左)ち山口さん(右)新倉さん(左)ち山口さん(右)新倉さんは、東京都の西北部に位置する西東京市の西武線田無駅の近くで、5,000㎡を超える規模で施設園芸を営まれています。施設化は早く、1979年に定量・定品質の安定出荷をめざし、導入されました。
現在の施設構成は、簡易トンネルハウス(ベトコンハウス)で2,170㎡、パイプハウスで830㎡、大型鉄骨ハウスで2,080㎡となっています。
当初の施設導入にあたり、投資額の少ない安価な簡易トンネルハウスの考案に関わられ、ベトコンハウスと呼ばれるようになりました。

作目の増大に伴い生育適温に合わせた施設形式を選択されており、一部には保温力の高い大型鉄骨ハウスの加温栽培も行なわれています。
ベトコンハウスでは、導入当初、経済的負担軽減のためアーチスパン延長・母屋数の削減・妻面資材省略等の低コスト化を模索したものの数々の強風被害を経験するなかで、強度にも優りまた好適な栽培環境を最大限発揮できる施設形式を取り入れられ、今日に至っています。
軟弱葉物野菜(コマツナ、ホウレンソウなど)の栽培は、換気が命といわれるほど施設内換気が重要視されています。いかに換気能力を増強するかに気を使われて、多連棟化を避けられています。したがって、新倉さんはベトコンハウスについて、妻面換気向上のため作業性を犠牲にして奥行き20mに統一されています。
新倉さんは、農ビ全盛時代の当初から一貫して農POのクリンテートを展張しており、十数年前に一度だけ光線選択性農ビを数棟に使われたことがありましたが、クリンテートの耐候性に慣れていて物足りないとクリンテートに切り替えられた経過もありました。
近年はフィルム更新作業の軽減化のため大型施設を中心に中長期展張フィルムのクリンテートエクストラ(EX)および紫外線カットのエクストラユーブイ(EXUV)を展張されています。また、ベトコンハウスには、クリンテートユーフォー(UFO)や紫外線カットフィルムのクリンテートグローマスター(GM)などを使い分けられています。
東京都は温暖な地域であり、施設園芸はもともと雨除け施設的な用途で導入されており、十数年前からオール農PO化しています。
強度に優れるとして強風地区(50m/s超)の伊豆諸島での評価も高く、都内(内地)では農ビに比しても防塵性に優位であり、クリンテートの普及が加速し、またバンドレスハウス化の施設建設におおいに貢献したところです。
今後、サンテーラ(株)のクリンテートには、他社品農POの台頭が顕著であり、さらなる防塵性の改良を期待したいものです。

がんばる!クリンテート家族
クリンテートで良質なミズ菜を安定出荷茨城県 鉾田市(JA茨城 旭村)
大久保 努さん

鉾田市は、メロン、ミズ菜、甘藷、ゴボウなど算出額日本一の地域であり、その他にも苺、トマト、人参、大根、山芋、パセリ、ほうれん草は算出額が県内一といった農業のとても盛んな地域です。その鉾田市で、現在、葉物のハウス栽培をされている大久保さんを訪ね、お話を伺いました。
私の家は親父の代より、春メロンと抑制栽培でアールスメロンの組み合わせで30年近く作りつづけてきましたが、連作障害(ツル割れや根腐れなど)の発生が目立つようになった為、5年前よりミズ菜の周年栽培に切り替えました。
当初は葉物だからと安易に考え、ハウスのビニールは使用したものがそのまま使え、厳寒期にはメロン栽培で使ったトンネル資材を再利用出来るとの思いでスタートしました。
しかし、梅雨時期を迎えると多湿が原因で病気が発生し減産になったり、夏はハウス内の温度が上がり過ぎる為、遮光ネットの投資など思った様にはいかず苦労いたしました。
2年目に入りアーチパイプの老朽化の為、3間ハウスを11棟建て替えた際に、風で破れにくく、保温力の高いフィルムを希望したところサンテーラさんよりクリンテートDXを勧められ、外張りは0.1mm、内張りは0.075mmを導入いたしました。
3年目にはバンドレスハウスを勧められ7棟を建て替えましたが、DXが気に入りましたので、全てDXを展張しています。
出口部会長ハウス内のいちご「さがほのか」ハウス内で収穫に励む大久保さん以前からのお付き合いがあり、他社のPO(2社)も使用しておりましたがDXを使用したハウスで作った方が生育が良く、収穫時期が早いことに気付き、改めてDXは優れたフィルムであることを実感いたしました。周年栽培をするにあたり、収穫期の遅れはかなりの痛手となり、安定出荷が出来ないと同時に減収に繋がります。園芸農家は価格だけではなく、良い品質の生産資材を見定める目が必要であることを再認識しました。
この地域は無加温ハウスの為、冬時期の安定出荷について相談したところ、内張りにも0.1mmを勧められ現在は外、内張り共にDXを展張し、周年栽培に取り組んでいます。

現在、大久保さんは、3間のパイプハウスを中心に60棟ほどを所有し、奥様、パートさん、そして中国からの研修生3名で毎日、収穫、出荷に追われる日々を送っておられます。
これからもクリンテートで良質なミズ菜づくりを頑張っていただきたいと思います。(全農いばらき 園芸資材センター 皆藤様 記)

クリンちゃんの豆知識

石油に代わるエネルギー源としてバイオマスエネルギーが注目されており、すでに実用化が始まっています。今回はバイオマスについて勉強します。
バイオマスとは、生物資源(バイオ)の量(マス)をあらわし、エネルギー源として再利用できる動植物から生まれた有機性の資源のことです。また、石油や石炭などの化石資源と対比して、「生きた燃料」ともいわれています。
バイオマスの種類はいろいろありますが、大きく分けると廃棄物系バイオマスと栽培作物系バイオマスに分かれます。
廃棄物系としては家畜の糞尿や森林の間伐材、家庭から出る生ゴミや廃油があります。栽培作物系としては糖質やデンプンの多いサトウキビやトウモロコシがあります。
これらのバイオマスを原料として得られるのがバイオマスエネルギーです。例えば家畜の糞尿からはメタンガス、サトウキビからはエタノールができます。バイオマスエネルギーは地球規模で見て炭酸ガスのバランスを壊さない(カーボンニュートラル)、永続性のあるエネルギーとして地球温暖化対策にも役立つと期待されています。
しかし、その一方で原料となる作物を増産するために森林を破壊して急激な開墾が進められたり、食べ物として食べられるものを燃料に替えることで、食料との競合が問題となっている面もあります。
その問題を避けるため、食材とならない原料から作るセルロース系バイオマスエネルギーについて実用化の検討が進められているところです。

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