NO.28秋季号 2006年9月1日発行

関東における施設栽培野菜の動向元・埼玉県農林総合研究センター
園芸支所長 稲山 光男

はじめに関東における施設野菜栽培の発展は、西日本地域の施設野菜栽培とはその発展の背景に違いをみることができる。つまり、西日本地域では温暖な気候という「自然の地の利」を生かして施設野菜産地の成立をみてきたのに対し、関東の施設野菜産地は、第消費地に隣接した近郊という「地理的な立地条件」の上にたって発展してきたとみることができる。

しかし、関東地域の平坦地は地理的条件だけではなく、冬期の気温は厳しい低温である反面で、冬期は晴天日が続き日射量も多いことも大きな支えになっている。

このことは関東の施設野菜栽培では、早くからハウス内のカーテン開閉装置開発や夜温管理技術の研究が行われて復旧につながったことで、一戸当たりの経営面積が決して大規模とはいい難いかわりに、単位面積当たりの収量や収益から産地の成立をみることができた。

施設の導入と果菜類の栽培の動き

農POを展張した軒高のトマト長段採り栽培ハウス農POを展張した軒高のトマト長段採り栽培ハウス 関東地域だけの問題ではないが、施設野菜園芸が普及して半世紀になる。その中で生産農業に接していると、この間に2代目、3代目への世代交代が見られる。その一方で高齢化している生産農家も少なくないのが現状でもある。これまでの栽培施設の導入が、事業や制度融資などの行政施策のもとに行われてきた経過がみられなくなっている。 このような中で、統計的にみると関東での施設設置面積は、少ないながらも増設の傾向がみられる。一方果菜類の作付動向をみると、関東の各県では栃木県が、県をあげて野菜の振興策を講じていることから、トマトでの低コスト耐候性ハウスの導入による長期多段採り栽培で、イチゴでは新品種の育成や高設栽培の普及などから増加がみられるのと、茨城県でイチゴでの増加傾向がみられる他は減少傾向にあり、特にキュウリとナスは各県とも減少している。

このようなことからみると、施設の増設傾向は軟弱野菜等での周年栽培や防虫対策などからのパイプハウスなどの導入が幾分進んでいるのかもしれない。

果菜類の品種の動向ナスは民間育種でイチゴは公的機関での品種の改良が行なわれているが、どちらも品種が頻繁に更新される野菜ではなく、ナスは"式部"を主流に長いこと品種の変化をみない。イチゴは、最近各県から新しい品種が発表されている。 しかし、主流としては"女峰"から"とちおとめ"に替わった以外は大きな変化はみられない。

一方、トマトは1985年頃に"瑞秀"から"桃太郎"が主流を占めるようになり、その中で「完熟」や「高糖度」などの付加価値をつけた栽培も行なわれるようになって現在に至っている。最近の動きをみると、桃太郎シリーズの中ではあるが、"はるか"への移行がみられるほか"麗容"や"マイロック""サンロード"その他幾つかの品種を耳にするようになってきている。このことは、特に関東においては流通が、かつての市場出荷のみから直売や契約的な販売など様々な販売方法が導入されてきたことによって、必ずしも画一された品種でなくても生産者の思惑で販売が可能な場面が出てきたことによるものと思われる。

また、キュウリもブルームレス台木の普及と果形、果色、光沢など外観的に整った"シャープ1"の時代が長く続いてきたが、最近はトマトと同様に販売方法が変化してきた中で、さらに美味しさが強調されるようになって品種に変化がみられるようになりつつある。

これからの課題関東における施設野菜の栽培は、これまで近郊産地という位置から消費の動向に敏感に対応してきた。しかし、産地を取り巻く環境の変化から、省エネルギー対策や省力化、低コスト化への努力は当然のことながら、これまでの市場出荷中心の形態から、市場出荷主流の出荷の中においても、また、業務・加工用も含めた契約的な出荷、さらに直売等々など販売方法の多様化がみられるようになりつつある。そこで、これからは流通の変化にどのように対応していくかが大きな課題となるであろう。

つまり、これまでとは違った実需者が求める品質にどのような栽培対応をすることかで有利な施設野菜栽培の経営展開を図っていくか重要になろう。

がんばる!クリンテート家族
多年張りクリンテートエクストラで減農薬トマトを生産栃木県栃木市(JAしもつけ) 松本 勲さん
松本 勲さん栃木市は栃木県の南部に位置し、市の北部から西部にかけては県立自然公園大平山に連なる山々と、南東部には関東平野にむけて平坦地が広がり美しい自然と緑に恵まれた豊かな田園都市です。
JAしもつけ栃木トマト部会は現在29名の部会員で構成されています。トマト生産部会では唯一のLink・T(リンク・ティーとは栃木県の定める減農薬・減化学肥料の特別栽培農産物)の認証を受け、消費者の皆様に安心・安全なトマトを届けることを目標に掲げ日々努力されております。
同部会で地区役員をされている松本 勲さんはトマトをつくり始めて12年目になり、現在はマイロックという木なりで完熟させ、日持ちがする品種を栽培されています。東京太田市場をはじめ、新潟などへ出荷しています。
ハウス面積は69アールを所有し、家族3名、パートさんの計7名で作業をしています。フェンロー型連棟ハウスには、耐久性の高い軟質フィルムが展張されています。取材に伺った際、屋根型ハウスには6年間ご使用いただいた当社製品のマーキュリーがエクストラに張替えられている最中でした。この度の張替えにはJAグリーンとちぎの推進担当の清水さんの熱心な勧めで、引き続き、塗布型長期展張用クリンテートエクストラを使いたいと決めました。
6年間マーキュリーを使った感想は、強度があり、長い時間を経過した現在でも殆ど破れが無く安心して長期に渡り展張できると評価しています。また、ハウス内に散乱光がよく入り、トマトの陰の部分にも色がしっかりと付き生育性も良好でしたが、流滴性については良いとは言えず今回のエクストラには期待をしております。
硬質フィルムはハウス内の湿度が少なく玉が小さくなりがちですが、軟質農POフィルムは保温力もあり、使用後の処理問題も廃プラで処理ができ、今後はエクストラの様な軟質の長期展張農POが普及してくるでしょう、とご意見をいただきました。
JAしもつけトマト部会は4年前に農林大臣賞、また翌年に第41回 農林水産祭 天皇杯など名誉ある賞を度々受賞されている素晴らしい部会です。目標20tへの収量拡大と味の良いトマトづくりを目指し、松本様の今後の更なるご活躍をお祈りいたします。(栃木県営業担当 鈴木記)

がんばる!クリンテート家族
グローマスターで収量アップ松本さんちのピーマン栽培北海道富良野市(JAふらの)
松本 裕之さん

松本 裕之さん今回お伺いしたのは、北海道のど真ん中「北海道のへそ」とも呼ばれている富良野市です。富良野市は大雪十勝連峰と夕張山系に囲まれた盆地で、恵まれた自然環境の田園地帯です。気候は内陸性気候が特徴で、1日の気温差、年間を通じての気温差も大きく、冬はマイナス30度、夏はプラスの30度にもなることがあります。7月~8月の平均気温は20度以上で農業に適した気候環境です。
松本さんの栽培作物は、玉葱・スウィートコーン・南瓜、そしてハウスで栽培するピーマンです。
クリンテートとの出会いは、今から8年前に遡ります。その頃松本さんは、ピーマン栽培を始めようとハウス増設を考えていました。JA職員に相談したところ、紹介されたのがクリンテートDXでした。破れにくく丈夫で長持ち、風による不安も減り、安心して使用いただいています。
また3年前には、「害虫忌避・病害抑制効果の期待できるフィルム」ということで、JA職員から紫外線カットフィルム「クリンテートグローマスター(GM)」を紹介されました。
実際に使用すると、「スリップスが減少し、防除回数も以前と比べて少なくなった。害虫に対する不安が無くなった」「灰色カビ病が拡がりにくくなった」など、その効果を実感されています。この他にも「生育が旺盛で伸びが早く、結果的に収穫量も増加した」とクリンテートグローマスター効果に大変満足いただいています。
こうして作られたピーマンは、JAふらののブランド「大地の魔法使い」として各地に出荷されています。10月いっぱいまで続くピーマンの収穫作業。今回取材にお伺いした時も、夫婦お二人でピーマンを収穫している真っ最中でした。貴重な時間を割いていただき、誠にありがとうございました。今後もますますのご活躍を願っております。(北海道営業所 川越記)

クリンちゃんの豆知識

「クラインガルテン」という言葉をご存知ですか?
クラインガルテンはドイツにある市民農園のことです。150年以上の歴史があり、利用者は50万人をこえます。クラインガルテンを通じて、人々は自然と交歓し、家族や利用者仲間とコミュニティをつくります。ドイツではクラインガルテンを都市計画、及び社会政策の重要な項目として法律で位置づけ、高い公益性を与えています。最近、日本でも市民農園促進法ができ、市民農園の制度化が始まりましたが、ドイツはそのずっと先を行っているのです。旧東ドイツでは都市で消費される青果物の3~4割を占めるほどでした。
クラインガルテンクラインガルテンは一区画が平均100坪もあり、畑や芝生や花壇がつくられた区画にはラウベ(小屋)が建ち、生け垣や樹木できれいに囲まれ、100区画ほどでひとつの大きなクラインガルテンの団地をつくります。団地内にあるクラブハウスと広場は、人々の交流の場です。そんな緑のコミュニティであるクラインガルテンが街中に計画的に建設され、利用者組合で自主管理されています。
農薬や肥料の使用が制限されたり、雨水利用や堆肥等の循環を取り入れるなど環境にも配慮しています。効率一点で殺伐となりがちな都市生活に緑と土の香りのクラインガルテンを持ち込むことで、潤いと安らぎ、人々の温もりのある暮らしに転換します。身近な暮らしの中に豊かさを生み出すことがクラインガルテンの哲学です。
日本でもまちづくりや農地再生、余暇開発などにクラインガルテンが話題になっています。しゃれた農園付き別荘を売り出したところもあります。クラインガルテンは、私たちに家族、仕事、余暇、地域、環境、など広範にわたり、新たな「豊かさの価値基準」を創造する手がかりを提供してくれることでしょう。(引用:豊かさを見直す「クラインガルテン」(株)社会調査研究所)

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